(日銀)現状維持
日銀は1月20日~21日に開催した金融政策決定会合において金融政策の維持を決定した。長短金利操作、資産買入れ方針ともに変更なしであった。
同時に公表された展望レポートでは、景気の総括判断を「内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」へと下方修正した(「基調としては」を追加)。個別項目では、設備投資を上方修正する一方で、個人消費を下方修正している。
先行きについては、新型コロナの影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や政府の経済対策の効果などにも支えられて「改善基調を辿る」との見通しを維持。経済成長率の見通しについては、足元の緊急事態宣言再発令を受けて今年度を若干下方修正する一方で、経済対策の効果等を反映し、来年度以降を上方修正している。物価上昇率の見通しに関しては、今年度・来年度分について若干上方修正したものの、前回10月時点の見通しと同様に、22年度でも目標である2%の半分にも満たない水準に留まるとの見通しが示されている。
会合後の黒田総裁会見では、3月に公表予定の政策点検について、当会合にて「今後の点検作業の方向性について執行部から報告して、認識の共有を行ったところ」としたうえで、具体的には、大規模な金融緩和が(1)金融環境や経済・物価情勢に及ぼした影響、(2)金融仲介機能や金融市場の機能度に与える影響と副作用について点検を行うと説明。さらに問題意識として、「費用対効果の面でより効果的な運営ができないか」、「状況の変化に応じて、よりメリハリをつけた運営を行うことが考えられるのではないか」、「副作用に配慮しながら、いかに効果的な対応を機動的に行うか」という点を挙げた。
より具体的な点検の内容について、ETF買入れの柔軟化や金利変動許容幅の拡大について尋ねられた場面では、総裁は「次回の会合における議論と結論を私が先取りして何かを申し上げるのは適切ではない」と言及をさけたが、後者については、「レンジについてかつて一定のこと(±0.1%の倍程度・筆者注記)を申し上げていて、今の時点で何かそれを変えるですとか、どうこうすることを決め打ちしているわけではない」、「点検の中で色々な議論は出てくるとは思う」と付け加えた。
なお、物価の動向に関しては、黒田総裁は「原油価格の下落の影響やGo To トラベルの影響、その他一時的な要因がかなりあり、そうしたものを除いたベースでみると、小幅ながら依然としてプラスで推移している」、「通常のように需要が減っているのではなく、(中略)消費者が感染を予防するために対面型サービスを意図的に抑制しているときに企業側で価格を下げて需要を取り込もうというインセンティブはあまりない」と説明し、「現時点でデフレリスクが非常に高まっているというようにはみていない」との見方を示している。
また、29日に公表された「金融政策決定会合における主な意見」では、同会合において、「現行政策の大枠は維持しつつ、イールドカーブ・コントロールやETF等買入れにおいて、より弾力的でメリハリのある運用が重要と考える」、「10 年物国債金利が上下にある程度の範囲で変動することは、市場機能を通じて金融機関の運用ニーズを満たすことで金融システムの安定に資する」、「長期金利が変動しやすくなった場合でも、経済活動に与える影響は限定的であると考えられる」など、運営面でのメリハリ、金利変動の許容を是とする意見が複数の委員から出されていたことが判明している。