米バイデン大統領就任演説から政権の今後を占う

2021年02月01日

(田中 道昭)

■要旨
 
  1. 2021年1月20日、ジョー・バイデン大統領の就任式が行われた。バイデン大統領は2020年11月7日の大統領選勝利演説で「私は分断ではなく統合を目指す大統領になることを約束する」と宣言していたが、その後さらに分断が最大級に拡大した中で行われた就任演説は米国内外から大きな注目を集めるものとなった。
     
  2. 本稿では、米国のマーケティング専門領域の一つであり、選挙や政権運営において投票者・有権者との関係構築手法として浸透している「政治マーケティング」の視点から、大統領就任演説を分析するための7つのポイント-(1)演説の対象(国内)、(2)演説の対象(国外)、(3)対立構造、(4)ビジョン、(5)世界観、(6)価値観、(7)セルフブランディング(ポジショニング)-を設定し、4年前のトランプ前大統領就任演説と今回のバイデン大統領就任演説の比較分析を行った。
     
  3. これらの比較分析を踏まえ、(1)「結束×必ずできるという可能性ある世界観」が最大ポイント、(2)予測可能性が高いことが長所・短所、(3)「リンカーンの理想主義とルーズベルトの実利主義」の後者が示されなかったこと、(4)「意見の相違は必ずある」としつつも、反対側意見に耳を傾ける姿勢は示さなかったこと、(5)「結束×必ずできるという可能性ある世界観」を早期に実行していくことが重要、という5つのポイントからバイデン政権の今後について考察を行った。
     
  4. バイデン大統領は就任演説で「意見の相違は必ずある」「意見が違うのが民主主義」と述べた。だからこそ、南北戦争にも匹敵するような危機的な分断に対峙していくために、バイデン大統領には、相手側の意見にも耳を傾け、実直に対話を続けていくことこそが求められる。そこまで踏み込んでやっていくことで、バイデン大統領が就任演説の冒頭で述べた「今日は民主主義の日」が真に到来するのではないかと期待される。


■目次

1――はじめに
2――7大注目ポイントからトランプ前大統領とバイデン大統領の就任演説を比較分析する
  1|演説の対象(国内)
  2|演説の対象(国外)
  3|対立構造
  4|ビジョン
  5|世界観
  6|価値観
  7|セルフブランディング(ポジショニング)
3――バイデン政権の今後を占う就任演説からの注目5大ポイント
  1|「結束×必ずできるという可能性ある世界観」が最大ポイント
  2|予測可能性が高いことが長所・短所
  3|「リンカーンの理想主義とルーズベルトの実利主義」の後者が示せなかったこと
  4|「意見の相違は必ずある」としつつも、反対側意見に耳を傾ける姿勢は示さなかった
  5|「結束×必ずできるという可能性ある世界観」を早期に実行していくことが重要
4――バイデン政権が対峙する「現実の世界」
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