■人口減少と高齢化が同時に進むことで、地域を持続することが困難になる
平均寿命だけでなく、健康寿命を延ばすことが、個人の人生をより豊かにすると考えられています。健康寿命の延伸は、社会活動寿命と密接に関係しており、社会活動の主要なフィールドである地域社会もそれに応じて持続的でなければなりません。
ところが、既に地域社会を維持していくこと自体課題になっているところもあります。例えば、過疎地域があります。過疎化は若年層の流出と高齢化の進行に伴って進みます。同時に、第一次産業など生産活動の担い手が不足することで、循環的であった地域経済が停滞し、平行して、店舗や診療所など生活に必要な機能が次第に失われていきます。移動手段が確保できない場合、外出の機会、対人コミュニケーション機会が損なわれ、住民の健康への影響が懸念されるようになります。そうなると地域を自立的、持続的に運営していくこと自体が厳しいものになってしまいます。
このような課題を抱える過疎地域は、主に地方圏の町村部に多いのですが
1、今後、全国的に人口・世帯数が減少していくことが予測されている中で、地区単位で見れば、将来、都市部でも同様の特徴を持って進行するところが出てくることも十分考えられます。既にマイカーか公共交通を使わなければ医者に診療してもらうこともままならないという場所に暮らす高齢者世帯は、大都市圏でもかつてより増えています。
2018年に、最寄りの医療機関までの距離が1km以上の場所に暮らす高齢者世帯数は、関東大都市圏において29万8,600世帯、中京大都市圏では、11万5,000世帯、近畿大都市圏が、20万300世帯、その他の大都市圏は19万8,400世帯です。それぞれ、15年前の2003年から、14万8,400世帯、6万4,400世帯、11万3,100世帯、8万6,000世帯増加しています。(図表1)
多くの場合、元々医療機関がほとんど無い地域に暮らしていた層が、この間に高齢化したと考えてよいでしょう。増加率は、それぞれ約99%、127%、130%、77%で、特に近畿と中京でこの傾向が顕著になっています。
一方、2018年の高齢者世帯全体に対する割合は、その他の大都市圏が約28%を占めており、三大都市圏と比べ高く、特徴的です。高齢者世帯数は近畿大都市圏に匹敵しますが、三大都市圏を離れると、より不便なところに暮らす高齢者世帯の多さが見えてきます。