ユーロ圏失業率(2020年11月)-再ロックダウンでも雇用は底堅い動き

2021年01月12日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:11月も予想に反して低下

1月8日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2020年11月、季節調整値)】
失業率は8.3%、市場予想1(8.5%)より下振れ、前月(8.4%)から低下した(図表1)
失業者は1360.9万人となり、前月(1378.1万人)から17.2万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:再ロックダウンでも雇用は底堅い

11月の失業率は8.3%となり、10月(8.4%)からの悪化を見込んでいた市場予想(8.5%)に反して改善した。失業率は7月をピーク(8.7%)に4か月連続で低下したことになる。

一方、11月の若年失業率については18.4%と、10月(18.0%)から悪化し、2か月連続の上昇となった(図表2)。ただし、若年失業率も7月のピーク(18.9%)よりは低い状況にとどまる。

また、失業率・若年失業率ともに10月以前のデータの改定幅は小幅にとどまっている。
今回の景気後退期の雇用状況は、世界金融危機と比較した際の違いが鮮明になってきており、じわじわと雇用悪化が進んだ世界金融危機に対して、コロナ禍では、2020年7月に失業者の急増が見られた後、小幅だが改善傾向が続いている状況にある(図表3)。
次に、国別に11月の失業率の変化を見ると、データが公表されている17か国中、5か国で失業率悪化、6か国で失業率改善となっており(残りは横ばい)、全体の失業率は改善したものの、悪化している国も散見され、大国ではフランスやスペインがそれぞれ0.2%ポイントの悪化となった。一方、改善が目立つ国としては、イタリアが0.6%ポイントと改善幅が大きい(図表4)。

若年層失業率では、8か国で悪化、6か国で改善しており、フランスは1.4%ポイントの悪化、スペインで0.5%ポイントの悪化と全体と比較しても深刻さがうかがえる(図表5)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、各国の公表値では、11月までで、イタリアは5か月連続、ポルトガルは6か月連続で雇用が増えていたことが明らかになっており、いずれの国も回復が続いていると評価できる。特にポルトガルは労働参加率もコロナ禍前の水準まで近づいてきており、回復が顕著と言える。イタリアはやや労働参加率の改善が頭打ちになっているものの、そこまで目立った悪化ではない(図表6・7)。

11月以降、各国で移動制限の再強化に踏み切っているが、総じて見ると、今冬の封じ込めではかなり雇用が底堅く維持されているものと見られる。ただし、封じ込め政策は長期化しており、また前述の通り失業率が悪化している国もあるため、先行きの不透明感はぬぐえない状況が続くだろう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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