ロシアGDP(2020年7-9月期)-大きく改善したが、第2波で先行きは暗い

2020年12月15日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:7-9月期は前年同期比▲3.4%まで改善

12月11日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2020年7-9月期の前年同期比伸び率は▲3.4%、予想1(同▲3.6%)から上振れ、前期(同▲8.0%)からマイナス幅が縮小した(図表1・2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:7-9月期は急回復したものの、第2波拡大で先行きの不透明感は強い

今回の結果は、11月12日に公表されていた予備推計値(前年同期比▲3.6%)から上方修正された形となった。

同時に公表された産業分類別の伸び率を見ると(図表3)、7-9月期は多くの産業でマイナス幅を縮小、もしくはプラスに改善している。4-6月期に落ち込み幅の大きかった「飲食・居住サービス」は前年同期比▲25.9%、「自家利用2」が同▲29.4%、「その他サービス」が同▲14.9%、「文化・芸術サービス」が▲10.9%といずれもまだ2桁減のとなっているが、マイナス幅を半減近く改善させている面もある。また、「金融」(前年同期比8.0%)、「情報」(同2.3%)がプラスを記録したほか、産業シェアの大きい「小売・卸売」(同▲1.0%)の改善幅が大きかったことも全体の成長率の伸びに寄与している。一方、原油需要の低迷によって鉱業(同▲12.3%)は冴えない結果となった。
季節調整系列では7-9月期は前期比0.7%(前期は同▲2.8%)であった。4-6月期の落ち込みは、厳しい封じ込め政策(非労働日の設定)により、個人消費を中心に急減したが(図表4)、7-9月期は制限が緩和されたことで、ペントアップ需要が一定顕在化し反発が大きかったと思われ、産業別にはサービス業の反発が強い(図表5)。
ロシア経済は7-9月期には大きく改善したものの、10月以降は新型コロナウイルス感染者の再拡大が目立っており、足もとでは第一波を大きく上回る水準に達している(図表6)。こうした状況を受けて、モスクワ市で飲食店の夜間営業の禁止や娯楽施設の入場制限の厳格化が実施されている(11月13日から1月15日までを予定)ほか、感染拡大が目立つサンクトペテルブルク市でも、12月4日から一部娯楽施設の閉鎖が行われ、年末年始にはさらに厳しい制限が課される予定である。しかし、足もとでも新規感染者はピークアウトしておらず、今後、封じ込め政策のさらなる厳格化を余儀なくされるリスクがある。さらに、OPECプラスにおいては来年1月以降の原油増産を決めたものの、増産規模は小幅にとどまるなど、ロシア経済は先行きの不透明感が急速に強まっている状況にある。
 
2 自家利用の財・サービス。便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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