1|食費の推移~外食は回復基調にあるが一部中食需要へシフト、GoToに期待したいが効果は限定的か
食費について見ると、需要の減った外食の食事代や飲酒代は、4月を底に回復基調にある。ただし、9月の食事代(対前年同月実質増減率▲21.3%)は3月(▲30.3%)と比べて改善しているが、9月の飲酒代(▲54.6%)は未だ3月(▲53.5%)を若干下回る水準にあり、昼間の外食と比べて夜間の戻りは鈍いようだ。なお、夜間の利用者数が激減したことなどを背景に、JR東日本では来春のダイヤ改正時に終電時間の繰り上げを予定している。
今後の外食需要の回復には、9月から順次開始されている政府の「GoToイートキャンペーン」に期待したいところだ。しかし、ニッセイ基礎研究所「
新型コロナによる暮らしの変化に関する調査(第二回)」によると、20~60歳代の約半数の消費者はGoToイートを利用するつもりはない。また、利用しない理由は「国内の感染がまだおさまっていない」(31.1%)が最も多い
2。現在、北海道などの寒冷地では感染が再拡大しており、今後はインフルエンザとの同時流行の懸念もある。今後の感染状況にもよるが、感染再拡大の懸念が強まる中では、GoToイートによる外食需要の劇的な回復は難しく、効果は限定的なものにとどまるだろう。
ところで、先行して開始されたGoToトラベルの利用状況を分析すると、独身の若者や子どもが独立したシニア・ミドル夫婦のほか、公務員や正社員、高所得層といった時間やお金に余裕のある層で利用に積極的な傾向がある
2。よって、GoToイートでも利用者が偏る可能性はあるが、一部の利用積極層によって外食需要が少しでも増える効果に期待したいところだ。
なお、GoToイートにはポイント付与(対象の飲食店予約サイトを経由した食事にポイントが付与される)とプレミアム付き商品券(対象飲食店で使える購入額に25%分を上乗せした食事券)の2つの施策があるが、前者については、10月1日の開始から10月15日までの利用者数は延べ1,091万人、割引額は97.5億円(予算消化率15%程度)である
3。なお、同事業は1月末までの予約・購入が対象であり(ただし予算消化次第終了)、3月末まで利用可能だ。
一方、巣ごもり生活における食事で需要の増したパスタや即席麺、生鮮肉、チューハイ・カクテル、出前などは、6月以降、おおむね横ばいで推移している。なお、図表2・3の出前は二人以上世帯のインターネットからの注文のみを見たものだが、先のニッセイ基礎研究所の調査によると、20~60歳代の消費者全体では、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーの利用は増えており、6月末と比べて9月末で一層伸びている(図表4(a))。つまり、外食需要が回復しない中で、外食需要の一部が中食需要へシフトするとともに、中食需要自体も一層増しているようだ。この背景には、ビフォーコロナから共働き世帯や単身世帯などの利便性を重視する世帯が増加傾向にあったことに加えて、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーの選択肢が増え、消費者にとって魅力が増したことなどがあげられる。
3 NHKニュース「「Go Toイート」ポイント付与事業 利用者延べ1000万人超」(2020/10/24)