ユーロ圏失業率(2020年8月)-8%台までじわりと上昇

2020年10月02日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:8%台までじわりと上昇

10月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2020年8月、季節調整値)】
失業率は8.1%、市場予想1(8.1%)と同じで、前月(8.0%)から微増した(図表1)
失業者は1318.8万人となり、前月(1293.7万人)から25.1万人増加した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:金融危機時より増加数が小幅な状況

今回の失業率は市場予想と同じ8.1%となり8%を超えた。7月までの改定値データを見ると、6月、7月ともに0.1%ポイント悪化しており(7月改定前:7.9%→今回:8.0%、6月改定前:7.7%→今回:7.8%)、7月も8%台に修正されている。

失業者数の変化は、6月42.8万人増、7月36.3万人増、8月25.1万人増と増加ペースは鈍化している。また、単月でみても累積でみても世界金融危機と比較して、失業者増加数は小幅なものとなっている(図表3)。
若年者(25才以下)の失業率を見ると8月は18.1%で、7月までの数値は悪化方向に改定されている(7月改定前:17.3%→今回:17.8%、6月改定前:17.2%→今回:17.6%)。7月から8月の悪化幅は0.3%ポイントと、前月からやや加速した(前掲図表2)。

国別の失業率を見ると(図表4)、8月はスペイン・フランスとを中心に10か国で失業率悪化、イタリアなど5か国は失業率改善となった。若年層(図表5)は8か国で失業率悪化、5か国で失業率改善だった。イタリアが30%超、スペインが40%超で悪化が進んでおり、雇用環境の悪さが目立つ。
月次データを公表しているイタリアとポルトガルでは、労働参加率が上昇し、非労働力人口となった人が労働市場に戻ってきている傾向が続いている。ただし、8月時点でも2月と比較すると非労働力人口はイタリアでは25.6万人、ポルトガルは3.9万人多い状況であり、今後も失業率悪化として顕在化してくる余地は残っていると見られる(図表6・7)。
各国の雇用維持政策の状況を見ると、フランスは最大2年間利用できる制度、イタリアは年末にむけ18週間利用できる制度を導入(いずれも7月から)、ドイツやスペインでは既存制度の延長(ドイツは21年1月2末、スペインは21年1月末まで)を決定するなど、欧州主要国では内容を調整しつつ、少なくとも年内も継続を決めている。そのため、今年については失業率の悪化ペースは小幅な上昇にとどまると思われる。ただし、欧州では感染第2波の拡大により封じ込め政策を強化している地域・業種があり、経済・雇用環境は厳しい状況が続いていると言えるだろう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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