次に、コロナ禍の中で、どのような投資家がスタートアップに投資を行っているかを見ていきたい。図表3,4は2020年上期と2019年下期の投資家毎のベンチャー投資の金額と件数を示している。
各投資家の投資金額は、ソフトバンクグループが2019年下期の53億米ドルから2020年上期の35億米ドル、テンセントは47億米ドルから39億米ドルと大きく減少している。
ソフトバンク、アリババ、テンセントといった巨大テック企業は事業の成長などによって獲得した豊富な資金をスタートアップに投資している。こうした投資家はコロナ禍の中、スタートアップへの投資を減らしていることが分かる。
その一方で、セコイア・キャピタルの投資金額は2019年下期の63億米ドルから2020年上期の71億米ドル、アンドリーセン・ホロウィッツは31億米ドルから48億米ドルと増加している。これらの投資家は、コロナ禍の中でも継続して、スタートアップに投資を行っていることが分かる。
これらのベンチャーキャピタルは、過去、優れた投資実績を積み重ねている。セコイア・キャピタルは1972年に創業した老舗ベンチャーキャピタルである。同社は長期的な視点で、次世代の市場成長に投資することを哲学としている。
アンドリーセン・ホロウィッツは、起業に必要なコストの低下などにより、ベンチャーキャピタルは資金の豊富さだけでは差別化を図れなくなっていると主張している。このため、同社は資金面のみならず、人材採用、マーケティングなどスタートアップの成長に必要な様々な支援を行っている。
これらのベンチャーキャピタルは、コロナ禍の中でも投資を継続しており、スタートアップの支援・育成を継続的に行っていることが分かる。
コロナ禍により、世界の経済は低迷しているが、将来の成長に向けた投資を行う好機かもしれない。
過去、リーマンショックによって世界の経済が低迷する中で創業したAirbnb(2008年創業)やUber(2009年創業)といったスタートアップは、その後、ユニコーン企業へと成長を遂げた。現在、コロナ禍の中で行われた投資が将来のユニコーン企業の誕生につながるかもしれない。