8月は世界的に株価が上昇する中で、国内株式を中心に株式ファンドでは利益確定の売却が膨らんだ様子である。外国株式でも一部のテーマ型ファンドなどでは大規模な資金流出があった。それでも外国株式は、7月と比べると鈍化したとはいえ2カ月連続の大規模な資金流入となり、販売が堅調であったといえよう。
外国株式の販売を牽引したのは、7月と同様に新規設定ファンドであった。8月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が赤太字)に900億円を超える資金流入があり、さらに7月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が黄太字)にも1,700億円の資金流入があった【図表2】。外国株式への流入金額3,400億円のうち2,700億円、実に8割が7月以降に新規設定されたファンドへの資金流入であった。
8月に新規設定された外国株式ファンドで、特に投資家の人気を集めたものが「野村ブラックロック循環経済関連株投信」(赤太字)である【図表2】。このファンドは、環境保護に注目したテーマ型ファンドである。7月に新規設定さたにも関わらず純資産残高が8月末時点で5,000億円を超えた「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」と同様にESG(環境:
Environment、社会:
Social、企業統治:
Governance)関連ファンドとみることができる。
ESGについては年金基金といった機関投資家の間で数年前から関心が寄せられていたが、7月、8月のESG関連ファンドの爆発的な売れ行きを見ると、ついに個人投資家が中心の投信市場にもESG(投資)が波及してきたのかもしれない。当然、個人投資家がESG(投資)に本当に熱心になってきているというよりは、ESG関連ファンドの新規設定に合わせて取り扱う販売会社が大々的にプロモーションすることによって、個人投資家にESG(投資)が認知されてきた面が強いだろう。
過去の投信市場を振り返ると、ESGと似たSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)といったテーマが注目を集め、関連するファンドが相次いで設定される時期もあった。そのようなファンドは現在でも償還されず運用されているものも多いが、それらのファンドに対する投資家の関心や人気はあまり長続きしなかった。今回のESGも、投信市場で一過性のいわゆるブームで終わってしまうのか、それとも定着していくのか、個人投資家の関心は移ろいやすいだけに見極めていきたい。
なお、ESG自体は比較的、新しいテーマであり、本当に高い投資収益と相反しないのか、現時点では専門家の間でも意見が分かれている。そのため、足元で人気を集めているESG関連ファンドがこれからどのようなパフォーマンスを上げていくのか、長期的に市場平均を上回るようなパフォーマンスを上げることができるのかにもファンドの人気の動向と合わせて注目すべきであろう。