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自家用車(白ナンバー)を用いた交通モード(有償)
次に、白ナンバーの自家用車両を用いた交通モード(図表1(i)~(m))について説明したい。道路運送法では、自家用車を用いて、他人を有償で運送されることは禁止されている。その例外として認められているのが「自家用有償旅客運送制度」である。
自家用有償旅客運送には、市町村が主体となって行うものと、地域のNPO法人や社会福祉法人等が主体となって行うものがある。
市町村が主体となるものの中には、バスやタクシーなどの公共交通が不足した「交通空白地」において住民等の輸送を行う(i)「市町村運営有償運送(交通空白)」と、身体障害者等、公共交通を利用できない人たちを輸送する(j)「市町村運営有償運送(福祉)」がある。これらを導入するためには、首長と地元のバス事業者やタクシー事業者らで構成する「地域公共交通会議」で合意を得る必要がある。NPO法人等が主体として行うものの中には、同様に、交通空白地において住民等を運送する(k)「公共交通空白地有償運送」と、身体障害者らを運送する(l)「福祉有償運送」がある。この場合も、地元の首長やバス事業者、タクシー事業者らで構成する「運営協議会」で合意を得る必要がある。
乗客の安全確保のため、(i)~(l)のいずれのパターンでも、ドライバーは第2種免許を取得するか、第1種免許の他に、大臣認定講習を受ける必要がある。実施する際は、地元の運輸支局等に登録する必要がある。ドライバーは、運送の対価として運賃を得ることができるが、目安はタクシーの半額程度とされている。課題は、「乗客を奪われる」という懸念から、地元のバス事業者やタクシー事業者の合意を得るのが難しい点、運賃が安いことなどからドライバーの担い手が不足している点がある。国は自家用有償旅客運送でインバウンドにも対応できることを目指し、2020年通常国会で観光客も乗せられるようにする法改正を行った
11。
また(k)と(l)のパターンでは、介護保険法を利用することにより、介護保険事業から事業費の補助を受けられる場合がある。介護保険の分類で「訪問型サービスD(移動支援)」と呼ばれる制度である。ただし、利用者や事業内容には条件がある。まず、利用者の半数以上が介護保険法による要支援1または要支援2の認定等を受けていることである
12。また、補助対象となる事業は、病院や買い物などに付き添う場合または、別の主体が開催する高齢者サロンや体操教室などへの送迎のみを行う場合である。なお、無償運送の(o)、(p)でも同様に、介護保険を利用した補助が受けられる。
自家用車を用いた有償運送ではこの他、要介護認定者等が利用できるパターン(m)がある。訪問介護事業所等の指定を受け、かつ一般乗用旅客自動車運送事業者の許可を受けた事業者の訪問介護員等が、病院への送迎など、訪問介護サービス等と連続したサービスとして利用者を輸送できる、というものである。ただし行先は、利用者の介護サービス計画で位置付けられたところに限られるため、高齢者が買い物や友人宅など、日常生活に自由に利用できる訳ではない。訪問介護士等の免許は第1種で良い。
11 初めて当該地域を訪れる観光客が、実際に自家用有償旅客運送を利用できるようにするためには、一定の車両とドライバーを確保した上で、アプリで検索して予約できるようにするなど、アクセスを容易にする装置が必要だろう。
12 半数に達していない場合でも、一部を補助してもらえるケースもある。