このような不買運動は日韓両国の経済にマイナスの影響を与えている。9月の日本の韓国への輸出額は、前年同月に比べて15.9%減り、貿易収支の黒字額も25.5%減少した。半導体の製造などに使われる化学製品3品目に関して日本政府が韓国への輸出規制を厳格化したことにより関連製品の輸出ができなかったことや、韓国での日本製品の不買運動が影響を与えた可能性が高い。さらに、米中貿易戦争の長期化などの影響もあり、9月の全体輸出額は5.2%減少した6兆3685億円、輸入額は1.5%減少した6兆4915億円にとどまった。この結果輸出は10カ月連続、輸入は5カ月連続減少している。
韓国も状況は同じである。9月の韓国の日本への輸出額は、前年同月に比べて6.0%減り、輸入額も8.6%減少した。また、韓国政府が11月1日に発表した10月の全体輸出額は、前年同月に比べて14.7%減少し、11カ月連続でマイナスとなった。これは2016年1月以来の約4年ぶりの大幅減少である。中国向けの輸出が減少したことや半導体価格が下落したことなどが影響を与えている。
一方、韓国からの観光客が多かった九州、大阪など日本の地域の被害も拡大している。
10月2日に釜山海洋水産庁が発表した資料によると、釜山と、長崎県の対馬市、大阪市、山口県の下関市、福岡市の4カ所を結ぶ国際旅客船の9月の乗客数は前年同月に比べて80%も減少した約2万1千人に過ぎなかった。韓国人観光客の急減に対し、対馬市の比田勝尚喜市長は、新たな観光客誘致に向けた宿泊施設整備費や宣伝費への財政支援を要請した状況である。
韓国側の被害も少なくない。韓国国内の居酒屋や和食屋、そして日本向け旅行会社の売上も急減した。長崎県の対馬市で韓国人が運営する食堂やホテルも売上が急減し、廃業や休業が続出している。大韓航空は10月14日、勤続年数満2年以上の社員を対象に自己啓発、家族の世話、再充電などを積極的に支援できるよう短期希望休職制度を実施すると発表した。大韓航空は短期希望休職制度の実施が従業員のワーク・ライフ・バランスを支援するなど業務改善の一環であると発表しているものの、不買運動などの影響で日本への観光客が減少し赤字幅が拡大したことが原因である可能性もある。さらに、大韓航空やアシアナ航空のような航空会社のみならず、ハナツアー、MODETOURなどの旅行会社の株価も大きく下落している。韓国政府は、日本の輸出規制の見直しや景気低迷により売上が減少した旅行・観光業界や、日本製品の不買運動により被害を受けた零細自営業者に、それぞれ1,000億ウォンと100億ウォンの助成金を10月から支援し始めている。
日韓関係の悪化が続く中で10月24日に安倍晋三首相と韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相との会談が21分間行われた。1年ぶりの会談であり、対話の重要性や現状への危機感をともにしたのは評価できるものの、お互いの認識の差異を縮めることはできなかった。
日韓関係が改善されるまでには、思ったより長い時間がかかるのかも知れない。しかし、時間がかかるとしても対話を継続していくことを諦めてはならない。飛行機では約2時間しかかからない距離であるが、日本人と韓国人の考えは大きく異なる。普通に話しても、アクセントの違いにより、誤解が生じることもある。口ではやさしく言ったつもりだが、文章になるとその感情が伝わらなく、本当の気持ちが伝わらない場合もある。また、表現の違いにより誤解されることも多い。従って、今後は、お互いを理解するための更なる努力が必要である。お互いに尊敬し合い、お互いの短所を言いあうよりは、長所を褒め、痛いところを触れないように努力することが大事である。まずは、民間や企業が現在の関係を維持しながら、少しずつ改善していけば、両国の関係は必ず良くなる。
実際、日本政府の輸出規制の見直しが発表される前までの韓国人の日本に対する印象は継続的に上昇傾向であった。つまり、日本に対して「良い印象を持っている/どちらかといえば良い印象を持っている」と答えた割合は、2013年の12.2%から2019年には31.7%まで上昇していた。