1|委員会活動による組合とテナント会の協力
「カフェ・キネマ」の店主小田墾(おだつとむ)さんが、2014年4月から2代目の「問屋町テナント会」会長となり、副会長に、「ウーヌス」というベイプ(電子たばこ)専門店を経営する明石祥有城(あかしよしゆき)さんが就いてからは、組合との協力関係をよりいっそう深めている。
組合の中に、まちづくり活動の企画、実施を担う「街づくり委員会」がある。小田さんと祥有城さんは、ここに呼ばれることが多くなったという。それまでは組合のイベントをテナントとして手伝うことが主だったが、最近は、街づくり委員会で一緒に企画を検討するようになった。
組合には他にも委員会があり、委員長は組合の理事が担う。そこに小田さん、祥有城さん等テナント会の若手が加わりアイデアを詰めていく。委員長から組合に企画を提案し承認を得て、予算化する仕組みだ。
小田さんは、「最初は、組合の人がどのような人達か知りませんでした。ただ、知り合っていく中で、組合とテナントがもっと仲良くなれば、さらにいい方向に変えていけると思ってきました」と話してくれた。テナント会ができ、組合との協力関係が築かれたが、お互いの理解が不足している面があると感じていた小田さんは、そのタイミングで会長を引き継いだ。
それから小田さんと、祥有城さんが心がけたのは、やれば面白いと思うことを組合と一緒に行うこと、そして、組合理事とのコミュニケーションだ。テナント会のイベントを組合に協力してもらうのではなく、組合主催のイベントにして、組合と一緒にやることが重要だという。そうして動き出したのに、フットサル委員会とイルミネーション委員会がある。
【フットサル】
月に1~2回程度、オレンジホールを使って組合メンバーとテナント会メンバー20人ほどがフットサルで一緒に汗を流す。2015年の夏頃、平日稼働率の低いオレンジホールをもっと活用できないかと組合からテナント会への相談から始まったものだ。
当初は、市内外からチームを募った大会にしようという案もあったが、まずは、組合とテナント会の健康増進を主目的にして、フットサルが好きなそれぞれのメンバーが集まって純粋にゲームを楽しむことにした。テナント会にとっては、ここでしか顔を合わせない理事もいることから、組合との交流を深める貴重な機会にもなっているという。
組合の方からテナント会に相談されたのはこれが初めてだ。ふたりは「テナント会の大きな進歩」と自己評価した。
祥有城さんは、「いずれ、平日の夜、組合の駐車場もフットサル場にしてやりたいですね。卸売業は夜、店を閉めるので駐車場が空きますから。今は、そうしたことを組合に提案できるような関係になりました」と話してくれた。
【イルミネーション】
街路樹にイルミネーションを灯したいという声は、テナント会の中にも以前からあったが、通り全体を灯すには予算の問題もあって実現できずにいた。しかし、2015年の冬、小田さんと祥有城さんは、できるところから始めようと、テナント会の限られた予算を使って、オレンジホールの一角にイルミネーションを設置した。テナント会の若手数名で設置していると、組合の理事が声を掛けてきて、それならイルミネーション委員会をつくってやろうということになり、2016年度の予算が承認された。
テナント会は、メインの通り全体に設置したいと考えていたが、見積もりを取ると予想を超える金額であったことから、オレンジホールの周囲に限定し、電球はテナント会の手作りで、街路樹への設置は、イルミネーションでまちを飾ることに共感してくれた知人に協力してもらった。
デザインは、祥有城さんが買い付けで訪れた海外の街角を参考に、既成の電球を購入していろいろな色にペイントした。
小田さんは、「昨年は、とりあえず設置したという程度のものでしたが、今回は自分たちがいいと思えるものができました」と話す。
イルミネーションが窓から見えるカフェの店主からは、お客さんが増えたと好評で、お客さんが撮影した夜の街並みの投稿を、SNSで目にすることも多くなった。
2016年10月にイルミネーションが点灯すると、各テナントが自主的に店の前をイルミネーションで飾り付けるようになったという。イルミネーションを設置した範囲は限られていても、テナント店主にそのような意識を促す効果があったのである。「いいお金の使い方ができた」と小田さんは評価する。小田さん、祥有城さんは、来年から徐々に設置範囲を広げていきたいと考えているものの、むしろ、このようにテナント各自の自主的な取り組みがさらに広がっていくことを期待している。