このとき、私どもの設営は、プレスの皆さんには海側の踏切の海側の方でカメラを構えていただき、森首相と石原知事、その他の国会議員は、環8を陸側から海側に向かって歩いていただくと、必ず踏切に引っ掛かります。朝10時ごろの話なので、朝9時ごろにこれをやってしまうと、閉まりっ放しで全く様にならず、怒って帰ってしまうかもしれないので、適当に開く時間ということで10時過ぎにしました。
忘れもしない、これは西暦2001年2月1日のことです。なぜ忘れもしないかと言いますと、みぞれが降っていたのです。さらになぜ忘れないかと言いますと、その3日前まで石原知事はダボスの国際経済人会議に出席していたわけです。この2月1日の前々日、東京に帰ってまいりました。
私はダボスに電話しても、これでは実感が湧かないから、成田空港に着いたら車の中から知事との電話をつないでほしいと随行の秘書に頼みまして、電話で知事にお願いしました。
「帰国なさったばかりで恐縮ですが、あさってこういうアピールをします。京急の連続立体交差化のためです。ぜひ朝来てほしい」と申し上げました。そうしたら、皆さん想像がつくと思いますが、「何で森君が来るのに俺が行かなきゃいけないんだ」と言われました。
石原さんの方が先輩ですから、その種のことをよく議会でもおっしゃいましたが、そういったことを言われました。「いや、予算の前倒しです。蒲田警察署にとにかく午前10時に来てください」とお願いしました。「うーん」とか言われて、電話は切られてしまいましたが、蒲田警察署に来てくれました。
この写真の陸側に向かって行って、すぐ左側に蒲田警察署があります。そこに首相と知事に集合していただいて、こうやって首尾よく、当たり前ですが踏切に引っ掛かって、渡ってきた首相と知事が「こんな踏切をいつまで放っておくのだ。環8だぞ、羽田空港があるのだぞ、けしからん。早く連続立体交差化すべきだ。予算を前倒して付けろ」というふうに言っていただきました。
首尾よくこの年から予算が付いて、現在はご承知のとおり京急の立体化ができています。
これが2001年2月1日のみぞれの降る日にやったイベントなので、11年かかって京急の連続立体交差化本線、合わせて羽田空港線の連続立体交差化ができたことになります。これで箱根駅伝の選手が羽田空港線のためにここの踏切で足踏みをして、後でその分をタイムカットするという、東京都にとってみっともない話はなくなったことになります。
ですから、皆さんこうして見るとどうでしょうか。この種のインフラ整備はとても難しいように思われるかもしれないのですが、私の人生の経験から言うと、私たちが都庁にいた時代にずっと課題だったことは結構出来上がっているのです。
今言っているように簡単ではなくて、実はまだまだ中身は紆余曲折あって、一つ一つにエピソードが満載されているのですが、とにかくできているわけでございます。私たちはやはりこういったことを次の世代のためにしていくということだと思います。
実はロンドンもやっていまして、ロンドンはオリンピックの前にこうやって地下鉄の中でも、オリンピックゾーンは専用車両だから使わないでということをやっていて、これでしのぎました。
でも同時に2012年のオリンピックが始まった年に、地下鉄のクロスレールの工事を始めています。今走っている地下鉄はチューブといって、大江戸線より一回り小さい地下鉄です。1863年に開通したのでしょうがないのですが、地下鉄とはいえないというと失礼かもしれませんが、そういう代物です。
しかし、今度造るクロスレールは本格的なもので、自動車交通ではとても不便なロンドンを東西で結ぶ地下鉄でございます。これを今は掘っています。
2012年のロンドン五輪が始まったときに掘り始めたので、私はロンドン市役所の人に悪態をつきました。
「なぜオリンピックを始めるときに道路を掘り返し始めるの」と聞くと、彼らは「違うんだよ。オリンピックムードがあるから、この着工ができたのだ。これもオリンピックのレガシーだよ」と言っていました。私はそういう考え方がやはり必要なのかなと思います。
さらに言うと、シティーから見てテムズ川の向かい側にシャードが建ちました。このシャードのビルはヨーロッパで最大の高さのオフィスビルになりました。ロンドンは今まで超高層ビルなど造らなかったのです。ドックランズのみということだったわけですが、これが建ちました。
これもやはり計画はオリンピックのときです。「これもオリンピックのおかげか」とロンドン市役所の人に言うと、「いや、違う。今年は、この種の高い建物に必ず反対するチャールズ皇太子がとてもハッピーな状態にあったので、これが通ってしまったのだ」と言っています。
例の皇太子の息子さんの婚約が整ったときに、これが許可されているのです。そういう事情はあるのですが、みんな努力しているということだと思います。
最後に一言だけ、この話をしておきたいと思います。オリンピックはスポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でございます。