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企業物価指数2025年6月~ガソリン補助金の影響などで、国内企業物価は前年比3%を割り込む~

2025年07月10日

(佐藤 雅之) 日本経済

1.国内企業物価は10ヵ月ぶりの前年比2%台

日本銀行が7月10日に発表した企業物価指数によると、2025年6月の国内企業物価は、前年比2.9%(5月:同3.3%)と、10ヵ月ぶりに2%台へと鈍化した。

内訳をみると23類別中、18類別が上昇、1類別が横ばい、4類別が低下となった。ガソリンが前年比▲3.0%(5月:同2.5%)、軽油が同▲5.1%(5月:同3.8%)といずれも下落したことなどから、石油・石炭製品は前年比▲4.6%(5月:同0.8%)となり全体を押し下げた。ガソリンは5/22から補助金を1リットル当たり10円に固定する制度が導入されていたが、中東情勢の緊迫化による原油価格高騰を受けて6/26から1リットル当たり175円を上回る部分を全て補助する仕組みに切り替えられた。また、電力・都市ガス・水道は、原油安や円高の影響などから、前年比3.5%(5月:同6.4%)と前月から伸びが鈍化した。一方、精米が前年比76.6%(5月:同77.1%)、玄米が同78.6%(5月:同80.0%)とコメ価格の高騰が続いていることから、農林水産物は前年比43.9%(5月:同43.5%)と高い伸びが続いている。

2.契約通貨ベースの輸入物価は前年比▲6.1%

6月の契約通貨ベースの輸入物価は、前年比▲6.1%(5月:同▲4.7%)と10ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、ガソリンが前年比▲13.6%と11ヵ月連続のマイナス、ジェット燃料油が同▲16.9%となったことなどから、石油・石炭・天然ガスは前年比▲17.2%(5月:同▲13.8%)と10ヵ月連続のマイナスとなった。

契約通貨ベースの前月比では、▲1.6%(5月:同▲1.2%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、原油が前月比▲8.1%と4ヵ月連続のマイナス、液化天然ガスが同▲3.2%(5月:同0.5%)と下落に転じたことなどから、石油・石炭・天然ガスは前月比▲5.2%(5月:同▲4.2%)と4ヵ月連続のマイナスとなり、全体を押し下げた。

6月の為替相場は、対ドルでは144円台(前月比▲0.1%)と前月からほぼ横ばいで推移し、円ベースの輸入物価は前月比▲1.7%(5月:同▲1.1%)と前月よりマイナス幅が拡大した。

3.先行きの国内企業物価は前年比2%台で推移すると予想

国内企業物価は前年比の伸び率が前月から鈍化し、10ヵ月ぶりに前年比2%台となった。先行きについては、飲食料品の上昇率が前年比4.5%と2023年夏頃(同8%台後半)に比べれば低水準にとどまっているものの、食料品値上げの動きはしばらく続く可能性が高い。

一方、電気・都市ガス代の支援策は2025年7~9月使用分で再開される。また、ガソリン価格は政府による「燃料油価格定額引下げ措置」によって押し下げられ、エネルギー価格の上昇率は低下することが見込まれる。さらに、農林水産省が7月7日に発表した6月23日の週のコメの平均店頭価格は3,672円/5kgと6週連続で価格が下落するなど、コメ価格は備蓄米効果による価格押し下げ圧力が生じている。今後は前年の急上昇の裏が出やすくなることが考えられ、コメ価格の前年比の伸びは次第に鈍化していくことが見込まれる。以上より、先行きの国内企業物価は2%台で推移すると予想する。

経済研究部   研究員

佐藤 雅之(さとう まさゆき)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済

経歴

【職歴】
 2020年4月 株式会社横浜銀行
 2024年9月 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員

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