NEW

「ラブブ」とは何だったのか-SNS発の流行から考える“リキッド消費”

2025年11月20日

(廣瀬 涼) 消費者行動

■要旨

本稿は、中国発のキャラクター「ラブブ(Labubu)」のブームを事例に、現代における消費の流動化――リキッド消費(liquid consumption)――の構造を考察するものである。

ラブブは、ハイブランドとの共演やインフルエンサーによる拡散を通じて、SNS上のトレンドの象徴となった。

その過程で投機や転売の対象へと変化し、一般消費者が実際に手にすることは難しくなった結果、「SNSでは誰もが知っているのに、現実では誰も持っていないキャラクター」という矛盾を生み出した。

本稿では、この現象をリキッド消費のうち、とくに短命性(ephemerality)の観点から捉え、SNSが生み出す「可視化された欲望」の連鎖と、それに伴う過熱的短命性の構造を明らかにする。

ラブブの流行は、人々の関心・共感・欲望が瞬間的に立ち上がり、同じ速さで消費されるという現代的リズムを示しており、本稿はこの事例を通じて、現代消費社会における「流行の寿命」と「欲望の可視化」がいかに消費文化の構造を変化させているのかを考察する。

■目次

1――「ラブブって、もう流行ってないよね」
2――カルチャーアイコンから"投資対象"へ
3――誰もが知っているのに、誰も持っていない
4――祭りの屋台に並ぶ偽物たち
5――希少性と大衆化のジレンマ
6――二つのトレンドの波
7――リキッド消費
8――「いま、それに参与していること」そのものが価値化されるSNS社会
9――リキッド消費の時代における消費文化

生活研究部   研究員

廣瀬 涼(ひろせ りょう)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費文化論、若者マーケティング、サブカルチャー

経歴

【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
     ニッセイ基礎研究所入社

・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員

【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)