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消費者物価(全国25年9月)-コアCPI上昇率は拡大したが、先行きは鈍化へ

2025年10月24日

(斎藤 太郎) 日本経済

■要旨

2025年9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合=コアCPI)は前年比2.9%上昇し、前月から0.2ポイント拡大した。

食料(生鮮食品を除く総合)の上昇率は2ヵ月連続で鈍化したが、電気・都市ガス代支援策の値引額が昨年よりも小さく、エネルギー価格が上昇に転じたことがコアCPIを押し上げた。

食料(除く生鮮)は7.6%上昇と2カ月連続で上昇率が縮小し、先行きも鈍化傾向が続くことが見込まれる。

コアCPI上昇率は電気・都市ガス代支援策の影響がなくなる12月には2%台前半、ガソリンの暫定税率が廃止されれば、2%程度まで鈍化することが予想される。

■目次

1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント拡大
2.物価上昇品目数が2ヵ月ぶりに減少
3.コアCPI上昇率は25年末に2%台前半まで鈍化する見込み

1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント拡大


 

1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント拡大

総務省が10月24日に公表した消費者物価指数によると、25年9月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.9%(8月:同2.7%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.9%、当社予想も2.9%)通りの結果であった。

食料(生鮮食品を除く総合)の上昇率は2ヵ月連続で鈍化したが、電気・都市ガス代支援策の値引額が昨年よりも小さく、エネルギー価格が上昇に転じたことがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.0%(8月:同3.3%)、総合は前年比2.9%(8月:同2.7%)となった。
 
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(8月:前年比0.6%→9月:同0.4%)、灯油(8月:前年比6.2%→9月:同6.2%)の上昇率は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(8月:前年比▲7.0%→9月:同3.2%)、都市ガス代(8月:前年比▲5.0%→9月:同2.2%)が上昇に転じたことから、エネルギー価格は前年比2.3%(8月:同▲3.3%)と3ヵ月ぶりの上昇となった。

食料(生鮮食品を除く)は前年比7.6%(8月:同8.0%)と上昇率が前月から0.4ポイント縮小した。

米類(8月:同69.7%→9月:同49.2%)は4ヵ月連続で上昇率が鈍化した。ただし、上昇率の鈍化は昨年の急上昇の裏が出ているためで、価格自体は高水準が続いている。一方、米の関連品目は、すし(弁当)A(8月:前年比5.7%→9月:同5.4%)、すし(外食)A(8月:前年比6.9%→9月:同4.0%)の伸びが鈍化する一方、冷凍米飯(8月:前年比10.1%→9月:同10.3%)、すし(弁当)B(8月:前年比14.0%→9月:同15.1%)、すし(外食)B(8月:前年比7.9→9月:同8.3%)は伸びを高めるなど、まちまちな動きとなっている。

外食は前年比4.1%(8月:同4.4%)と上昇率は前月から0.3ポイント縮小した。
サービスは前年比1.4%(8月:同1.5%)と上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。外食に加えて、東京都の保育料無償化の影響で保育所保育料(8月:前年比▲1.9%→9月:同▲9.3%)の下落率が拡大したことがサービス価格を押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.18%(8月:▲0.28%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.70%(8月:1.77%)、その他財が0.35%(8月:0.45%)、サービスが0.67%(8月:0.76%)であった。

2.物価上昇品目数が2ヵ月ぶりに減少

2.物価上昇品目数が2ヵ月ぶりに減少

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、9月の上昇品目数は400品目(8月は416品目)、下落品目数は89品目(8月は73品目)となり、上昇品目数が2ヵ月ぶりに前月から減少した。上昇品目数の割合は76.6%(8月は79.7%)、下落品目数の割合は17.0%(8月は14.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は59.6%(5月は65.7%)であった。

3.コアCPI上昇率は25年末に2%台前半まで鈍化する見込み

3.コアCPI上昇率は25年末に2%台前半まで鈍化する見込み

食料(生鮮食品を除く)は25年7月の前年比8.3%をピークに2ヵ月連続で鈍化した。帝国データバンクの「食品主要195社価格動向調査」によれば、25年の飲食料品の値上げは2万品目を突破し、24年の12,520品目を大きく上回るペースで増加している。ただし、先行き3ヵ月の値上げ品目数は原材料コストの上昇一服を反映し、25年初め頃をピークに頭打ちとなり、増加ペースは前年並みに落ち着いてきている。人件費や物流費の価格転嫁に加え、物価高が継続したことで企業の値上げに対する抵抗感が薄れていることが値上げ長期化の背景にあることには留意が必要だが、食料(除く生鮮食品)の上昇率は鈍化傾向が続く可能性が高い。

コアCPIは、10月、11月は前年の電気・都市ガス代の支援策の裏が出る形でエネルギー価格が押し上げられるため、2%台後半の伸びとなるが、その影響がなくなる12月は2%台前半、ガソリンの暫定税率が廃止されれば、2%程度まで鈍化することが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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