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日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント上昇の15と予想、物価関連項目に注目

2025年09月19日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 9月短観では、注目度の高い大企業製造業において、小幅ながら、2期連続での景況感改善が示されると予想する。7月下旬に日米両政府がトランプ関税を巡って合意に至ったことが追い風となる。一方、大企業非製造業では、食品などの物価上昇に伴う消費者マインドの低迷等を受けて、業況判断DIがやや低下すると予想している。
     
  2. 先行きの景況感も総じて悪化が示されると予想。製造業では、引き下げられたとはいえ、高関税が続くことでその影響の広がりが懸念されるうえ、予測困難なトランプ政権の動向への警戒感が燻るだろう。非製造業では、長引く物価高による消費の腰折れや各種コストの増加、人手不足への懸念が反映されると見ている。
     
  3. 2025年度の設備投資計画(全規模)は、前年比7.2%増へとやや上方修正されると予想。企業収益が堅調な中で、人手不足を背景とする省力化や脱炭素、DXの推進など構造的な課題への対処に向けた投資需要が見込まれ、全体の支えになると考えられる。ただし、建設領域での供給制約に加え、トランプ政権に端を発する先行きの不確実性の高さが投資の抑制に働き、上方修正幅は例年よりもやや小幅になると見込んでいる。
     
  4. 今回の短観で最も注目されるテーマは、「関税による負の影響がどの程度顕在化するか」という点だ。日米関税合意を前向きと捉えて影響は限定的に留まるとの認識が示されるのか、それとも、やはり影響は大きいと捉え、収益計画や設備投資計画にも負の影響が及ぶのかが、日本経済や日銀金融政策の行方を考えるうえで注目される。また、企業の物価見通しも注目される。物価高の長期化を受けて予想物価上昇率がさらに押し上げられる場合には、日銀が重視する基調的な物価上昇率の押し上げや、物価高抑制のための利上げを求める声の高まりを通じて、日銀の利上げ判断に影響を及ぼしかねない。

 
■目次

9月短観予測:製造業景況感はやや改善、設備投資計画も下方修正回避へ
  (非製造業の景況感はやや悪化)
  (設備投資計画は下方修正を回避)
  (注目テーマ:関税の影響とインフレ予想の動き)
  (追加利上げの決定打にはならない)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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