4|Aviva
Avivaは会社ベースと(英国のソルベンシーII制度であるソルベンシーUKに基づく)監督・規制ベースの2つのソルベンシー比率を開示してきている。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、規制上のソルベンシーIIポジションに対して、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2025年上期末で13.71億ポンド、2024年末で13.87億ポンド、2023年末で14.08億ポンド)、職員年金制度(2025年上期末で2.78億ポンド、2024年末で2.97億ポンド、2023年末で3.97億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1) SCR比率の推移
2025年上期末のSCR比率は、2024年末の203%から3%ポイント上昇して、206%となった。
この要因については、以下の通りとなっている。
・資本形成(営業)により+13%ポイント
・資本形成(非営業)により▲6%ポイント
・配当により▲9%ポイント
・債務発行/返済により+13%ポイント(6億ポンドの劣後債の発行及び5億ポンドの制限付きTier1債の発行等による)
・その他として、優先株償還等により▲8%ポイント
また、ソルベンシー資本剰余、自己資本及びSCRの推移は、次ページの図表の通りとなっている。
自己資本とSCRの差額であるソルベンシー資本剰余は、2024年末の79億ポンドから2025年上期末の81億ポンドに2億ポンド増加した。自己資本は2024年末の156億ポンドから2025年上期末の158億ポンドに、2億ポンド増加した。これは、2024年の最終配当の支払いが6.55億ポンド(Aviva plcの優先株配当0.09億ポンド、GA plcの優先株配当0.12億ポンドを含む)、優先株償還等で▲6.53億ポンド(優先株償還が4.5億ポンド、Aviva plcの優先株償還に伴い支払われる特別配当が0.94億ポンド、GA plcの優先株償還に伴い支払われる特別配当が1.09億ポンド)という減少要因があったものの、資本形成(営業)と資本形成(非営業)による5億ポンドの増加、さらに2025年5月の6億ポンドの劣後債の発行及び2025年3月の5億ポンドの制限付きTier1債の発行等による10億ポンドの増加があったことによる。なお、SCRは、2025年上期末には、2024年末の77億ポンドから横這いだった。
また、(図表にはないが)グループの分散効果は、部分的には損害保険事業の成長を反映して、2024年末と同じ25億ポンドだった。
(参考)ソルベンシーUK改革の影響
ソルベンシーUK改革に伴う最終的なPRA(健全性規制機構)規則は、ソルベンシーIIの見直しを完了し、EUから継承された統合法を置き換えて、2024年12月31日から発効した。この見直しの一環として、リスクマージンの変更が2023年12月31日に施行され、さらに2024年6月30日にマッチング調整要件の変更が行われた。その結果、投資適格以下の資産に対するマッチング調整の上限が撤廃され、ファンダメンタル・スプレッドはノッチ付き信用格付けによって適用されるようになった。Avivaは、信用格付けに完全には反映されていないとみなされるリスクを反映するために、マッチング調整ポートフォリオ内の少数の資産に対するファンダメンタル・スプレッドを増やすことを選択した。全体として、これらの変更により、2023年12月31日時点で認識されたソルベンシーUK改革の約6%ポイントのメリットに加えて、2024年中にグループのソルベンシーII比率(会社ベース)が約4%ポイント増加した。
ソルベンシーUK改革により、TMTP(技術的準備金に関する移行措置)の計算も簡素化され、これは 2024年12月31日のソルベンシーには影響しないが、この変更により2025年から2031年にかけてのTMTP のランオフ(段階的終了)方法に影響し、これがより直線的になる。以前のソルベンシーIIルールでは、ランオフは初期の年には遅く、2031年にランオフするまでの TMTP の残余が大きくなっていたので、この変更によりランオフが速くなる。
(2) 感応度の推移
下記の図表において、2023年末以降の数値は、図表の脚注に記載されているように、金利、死亡率/罹患率、年金死亡率の変化幅が2022年末までとは異なっているので、注意が必要になる。
2022年末以降の感応度の変化については、事業の売却等によるポートフォリオの変更が落ち着いたこともあり、それ以前の年末間の変化に比べて、比較的安定したものとなっている。2024年末から2025年上期末にかけても、全体的に大きな変化は見られない。
(参考)感応度分析の限界
上記の表は、主要な仮定を瞬時に変更した場合の影響を示しており、他の仮定は変更されていない。実際には、これらの変化は一定期間にわたって発生する可能性があり、仮定と他のファクターの間には相関関係がある。これらの感応度は非線形であり、これらの結果からより大きな又はより小さな影響を内挿又は外挿することはできない。
感応度分析では、グループの資産と負債が積極的に管理されていることは考慮されていない。さらに、グループのソルベンシーIIポジションは、実際の市場の動きが発生した時点で異なる場合がある。例えば、グループの財務リスク管理戦略は、市場変動へのエクスポージャーを管理することを目的としている。
投資市場が様々なトリガーレベルを超えて変化するにつれて、経営行動には、投資の売却、投資ポートフォリオの割当ての変更、その他の保護措置の実行が含まれる可能性がある。
上記の感応度分析におけるその他の制限には、確実に予測することはできない短期間の市場の変化の可能性に関するグループの見解を示している、潜在的なリスクを示すための仮説的な市場の動きの使用及び全てのパラメータが同じように動くという仮定が含まれる。
具体的には、以下の通りである。
・感応度分析では、全ての期間で金利が平行移動すると仮定している。これらの結果は、平行でない金利の 動きの影響を計算するために使用されるべきではない。
・感応度分析は、全ての市場で同等の仮定の変化を前提としている。つまり、英国と英国以外の利回り曲線が同じ量だけ移動し、世界中の株式市場が同じように上昇又は下落する。
さらに、Aviva が保有する資産によって観察される動きは市場指数と同一ではないため、観察された指数の動きに感応度を適用する際には注意が必要となる。
(3) トピック
Avivaの2025年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2025年3月10日に、A Gomez Limited退職給付制度との480万ポンドの一括購入年金バイアウトの完了を発表した。
2025年5月28日に、Morrisons Retirement Saver Planへの2億7000万ポンドの投資を完了したと発表した。
2025年7月1日に、Molins U.K. Pension Fundとの2億4900万ポンドの買収契約を締結したと発表した。
2025年7月2日に、Direct Line
12の買収を完了したと発表した。
2025年8月20日に、ABB Planとの7億ポンドの一括購入年金バイイン取引の完了を発表した。また、Tescoとの生命保険パートナーシップの開始を発表した。
2025年8月27日に、Quest UK Pension Schemeとの1.34億ポンドの一括購入年金バイインの完了を発表した。
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