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東京オフィス市場は賃料上昇継続。宿泊需要は伸び率が鈍化-不動産クォータリー・レビュー2025年第2四半期

2025年08月12日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

1.経済動向と住宅市場

8/15に公表予定の2025年4-6月期の実質GDPは前期比+0.2%(前期比年率+1.0%)のプラス成長になったと推計される1。設備投資が前期比+1.0%と底堅さを維持し、物価高の影響が若干和らいだことで民間消費が同+0.3%と前期から伸びを高めた。なお、7-9月期については、米国の関税引き上げによる輸出の落ち込みを主因としてマイナス成長となる可能性がある。

経済産業省によると、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比+0.3%と2四半期ぶりの増産となった(図表-1)。業種別では、自動車が前期比▲3.2%と3四半期ぶりの減産となったものの、情報通信機械(同+7.6%)が高い伸びとなったほか、生産用機械(同+1.9%)や汎用機械(同+5.0%)が底堅い動きとなった。

ニッセイ基礎研究所は、6月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2025年度+0.3%、2026年度+0.9%を予想する(図表-2)2。2025 年度後半以降は、関税引き上げの影響が徐々に減衰し、輸出が下げ止まる中、民間消費や設備投資を中心に国内需要が増加し、潜在成長率を若干上回る年率1%程度の成長が続くと予想される。
住宅市場では、住宅価格が上昇するなか新規供給は低調に推移している。2025年6月の新設住宅着工戸数は55,956戸(前年同月比▲15.6%)と3カ月連続で減少し、4-6月累計では約15.5万戸(前年同期比▲25.6%)となった(図表-3)。建築物省エネ法および建築基準法の改正(2025年4月施行)3を前にした駆け込み需要の反動により、4月以降は大幅な減少が続いている。
2025年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は1,641戸(前年同月比▲1.3%)、4-6月累計では3,935戸(前年同期比▲6.0%)となった(図表-4)。6月の1戸当たり平均価格は9,165万円(前年同月比+11.8%)、m2単価は136.4万円(同+12.0%)、販売在庫は6,026戸(前年比+608戸)となっている。
東日本不動産流通機構によると、2025年6月の首都圏の中古マンション成約件数は4,299件(前年同月比+31.9%)と8カ月連続で増加し、4-6月累計では12,090件(前年同期比+29.2%)と3四半期連続で増加した(図表-5)。中古マンション市場では価格の上昇と成約件数の増加が続いている。
また、日本不動産研究所によると、2025年5月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比+1.2%、過去1年間では+8.6%の上昇となった(図表-6)。
 
1 斎藤太郎『2025年4-6月の実質GDP~前期比0.2%(年率1.0%)を予測~』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2025年7月31日)
2 斎藤太郎『2025・2026年度経済見通し-25年1-3月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2025年6月9日)
3 建築確認審査における「4号特例の見直し・縮小」、木造建築物に仕様に応じた「構造規制の合理化」、原則として全ての住宅・建築物の「省エネ基準への適応義務化」等

2.地価動向

2.地価動向

地価は、住宅地・商業地ともに上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2025年第1四半期)」によると、5四半期連続で全ての地区(全国80地区)が上昇となった(図表-7)。同レポートでは、「住宅地では、利便性や住環境の優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたことなどから、上昇傾向が継続。 商業地では、再開発事業の進展や国内外からの観光客の増加もあり、店舗・ホテル需要が堅調であったこと。オフィス需要も底堅く推移したことなどから、上昇傾向が継続した」としている。
また、野村不動産ソリューションズによると、首都圏住宅地価格の変動率(7/1時点)は前期比+0.5%(前回+1.3%)となり20四半期連続でプラスとなった(図表-8)。ただし、値上がり地点の減少(前回比▲9地点)や、値下がり地点の増加(前回比+4地点)が確認され、上昇率は弱まりつつある。

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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