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インド消費者物価(25年7月)~6月のCPI上昇率は+2.1%、食品価格の下落で6年ぶりの低水準に

2025年07月15日

(斉藤 誠) アジア経済

インド統計・計画実施省が7月14日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年6月のCPI上昇率は前年同月比2.1%と、前月の同2.8%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同2.3%)1を下回った。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比2.6%(前月:同3.1%)、農村部が同1.7%(前月:同2.6%)と、それぞれ低下した。

品目別にみると、主に食品価格の下落がCPIを押し下げた。

まず食品は前年同月比▲1.1%となり、前月の同1.0%から減少した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲19.0%(前月:同▲13.7%)となり価格下落が続いた。野菜価格は昨年の価格高騰の反動により前年同月比では減少しているが、前月比では7.2%と、2ヵ月連続で増加している。また豆類(前年同月比▲11.8%)と香辛料(同▲3.0%)、肉・魚(同▲1.6%)の減少が続いたほか、国際価格の緩和により穀物製品(同3.7%)や加工食品(同4.3%)、牛乳・乳製品(同2.8%)が鈍化した。他方、油脂(前年同月比17.8%)や果物(同12.6%)は二桁増だった。なお油脂価格の高騰は昨年9月の食用油の関税引き上げや国際的な価格上昇によるものだ。

燃料・電力は前年同月比2.6%(前月:同2.8%)と、国際商品価格の緩和により低下した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.4%(前月:同4.2%)と、小幅に上昇した。カテゴリー別にみると、金価格の高騰によりパーソナルケア(同14.8%)が二桁増を続けたほか、教育(同4.4%)や輸送・通信(同3.9%)、娯楽(同2.5%)が前月から小幅に上昇した。一方、衣服・靴(同2.6%)が前月から小幅に低下、住宅(同3.2%)は横ばいの伸びだった。
6月のインフレ率(CPI上昇率)は前年同月比2.1%と、主に野菜や豆類を中心とした食品価格の緩和とベース効果により8ヵ月連続で低下し、2019年1月以来の低水準となった。短期的にはベース効果が続くなか、国際商品市況の緩和を受けて落ち着いた推移が続きそうだ。

インド気象局(IMD)の予測では、今年の南西モンスーンの降雨量は長期平均(LPA)の106%となっており、2年連続で平年を上回る可能性が高い。実際、6月1日~7月14日の降雨量は平年を9%上回っており、コメや豆類など主要作物の播種は順調に進んでいる。10月頃に収穫時期を迎えるカリフ作の生産に好影響を与える見込みであり、価格安定の兆候となっている。
RBIは6月の金融政策委員会(MPC)では3会合連続の金融緩和を決定し、成長支えるために0.5%の大幅な利下げを前倒しで実施する一方、政策スタンスを緩和的から中立的へと変更した(図表3)。6月のCPI低下やインフレ見通しの改善を受けて、インド準備銀行(RBI)の追加利下げへの期待が高まるが、コアCPIはサービスとパーソナルケアの堅調な伸びに牽引されて緩やかに上昇しており、インフレ圧力は根強い。また天候の不確実性や米国の貿易政策による国際商品市況への影響を見極めるためにも、8月の会合は据え置きとなる可能性が高い。ただし、今後インフレが低下傾向で推移する場合には、10月に追加利下げが実施される展開が予想される。
 
1 Bloomberg集計の中央値。

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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