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マスク着用の子どもへの影響-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと

2025年06月30日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

■要旨

マスク着用が人々に与える影響に関する研究分野は、コロナ禍でのその研究の需要の高まりを受けて、近年急速に進展した。マスク着用の影響は、感染拡大予防効果のような医学的側面から、コミュニケーションの質など社会心理的側面まで多岐にわたる。コロナ禍を経た研究蓄積をもとに、そのメリットやデメリットを多面的に捉えることは、マスクとのより良い付き合い方を考える機会となるかもしれない。そこで、全5回の基礎研レポート/基礎研レターでは、マスク着用の人々への影響について、「健康」「メンタルヘルス(12)」「コミュニケーション(12)」に分けて、コロナ禍を経た研究蓄積からわかっていること/いないことを紹介した。しかし、こうしたマスク着用の影響は、大人と子どもの間では異なる可能性がある。
 
そこで、本稿では、マスク着用の子どもへの影響について、これまでの研究でわかっていること/いないことを紹介する。要約を先取りしてお伝えすると、子どものマスク着用の感染拡大予防効果についてはまだコンセンサスは得られていない。また、子どものマスク着用の身体的健康やメンタルヘルスへの悪影響を示す研究はほとんどみられない。一方、マスク着用はコミュニケーションをやや難しくさせる可能性があることが確認されている。そして、コロナ禍で長期的にマスク着用を経験したことによる今後の子どもの成長への影響については、まだわかっていない。

■目次

1――マスク着用の健康への影響:感染拡大予防効果は確立していないが、悪影響も確認されず
  1|子どものマスク着用の感染拡大予防効果はまだ確立していない
  2|子どものマスク着用の身体的健康への悪影響を示す研究はほとんどみられない
2――マスク着用のメンタルヘルスへの影響:悪影響は確認されていない
3――マスク着用のコミュニケーションへの影響:やや難しくさせる可能性がある
  1|マスク着用は子どもの個人同定や感情認識をやや難しくさせる
  2|マスク着用は子どもの音声認識をやや難しくさせる
  3|マスク着用の乳幼児と大人のコミュニケーションへの影響は限定的
4――マスク着用の子どもの成長への長期的な影響:影響の有無はまだわかっていない
5――おわりに

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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