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日銀短観(6月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは4ポイント低下の8と予想、設備投資計画も抑制的に

2025年06月18日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 6月短観では、注目度の高い大企業製造業で2期連続の景況感悪化が示され、景況感の低迷が顕著になりそうだ。トランプ政権による相次ぐ関税の発動・拡大を受けた輸出環境の悪化が景況感の下押し圧力になったとみられる。また、大企業非製造業でも、コメを始めとする食品価格上昇による消費者マインドの低迷等を受けて、景況感が悪化するだろう。
     
  2. 先行きの景況感も総じて悪化が示されると予想。製造業では、トランプ関税の長期化やさらなる引き上げ、それに端を発する世界的な貿易摩擦への懸念が重石となる。非製造業でも、関税による悪影響の国内経済への波及のほか、物価高による消費の腰折れや各種コストの増加懸念が反映される形で、先行きの景況感が悪化すると見ている。
     
  3. 2025年度の設備投資計画(全規模)は、2024年度実績比で4.0%増となり、上方修正幅は例年比べて小幅に留まると予想。例年、設備投資計画は計画の策定進捗に伴って6月調査で大きく上方修正される傾向があるが、既に深刻化している建設領域での供給制約やコスト増に加え、トランプ関税による収益圧迫懸念と不確実性の高まりを受けて投資を見合わせる動きが強まりつつあるとみられるためだ。省力化や脱炭素、DXの推進等に伴う投資需要が支えになるものの、現段階では抑制的な計画が示される可能性が高い。
     
  4. 今回の短観で最も注目されるテーマは、「トランプ関税による負の影響」だ。前回調査以降、トランプ政権によって新たな関税が発動されたり、既存の関税の税率が引き上げられたりしたうえ、先行きの不確実性も高まった。国内企業では、既に関税の負担に直面している企業や、先行きの不確実性に苦慮している企業も多いと考えられる。従って、今回の短観において、企業の景況感や収益計画、設備投資計画に負の影響がどこまで及んでいるかが、先行きの日本経済や日銀金融政策の行方を考えるうえで注目される。

 
■目次

6月短観予測:製造業景況感は2期連続の悪化、トランプ関税が逆風に
  (非製造業の景況感も悪化へ)
  (設備投資計画も抑制的に)
  (注目テーマ:トランプ関税の収益・投資への悪影響)
  (関税の影響を推し量るための初期材料に)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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