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「広島オフィス市場」の現況と見通し(2025年)

2025年06月18日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

■要旨
 
  • 広島のオフィス市場では、2025年第1四半期に3年ぶりに大規模ビルが竣工した一方で、立地改善や設備のグレードアップを図るオフィス需要も旺盛であり、空室率は前年同月比で低下した。こうしたなか、成約賃料はコロナ禍以降、一進一退で推移している。本稿では、広島のオフィス市況を概観した上で、2029年までの賃料予測を行った。
     
  • 広島県の就業者数は2年連続で増加しており、人手不足感が強く、企業の採用意欲が高まっている。以上のことを勘案すると、広島市のビジネスエリアにおける「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さいと考えられる。ただし、広島市の生産年齢人口の減少は今後も続く見通しで、引き続き注視する必要がある。
     
  • また、広島では、オフィスを含む職場環境の改善を目的とした設備投資を予定・検討する企業が増えている。コロナ禍を経て、「情報通信業」等を中心にテレワークが普及するなか、多様な働き方に即したオフィス利用や拠点配置を検討する企業の増加が予想される。
     
  • 一方で、トランプ政権の追加関税等の影響によって、自動車産業等の景況感が低迷し、地域の雇用環境等が悪化する懸念もあり、今後の動向を注視したい。
     
  • 新規供給について、「紙屋町・八丁堀地区」や「広島駅周辺地区」を中心に複数の大規模開発計画が進行中である。ただし、新規供給は数年おきに限定されるため、年間の平均供給面積(2018年~2027年)は地方主要都市のなかで最も小さく、既存ストックに対する比率もほぼ同水準となっている。以上のことを勘案すると、大きく悪化する懸念は小さいと見込まれる。
     
  • 広島のオフィス成約賃料は概ね横ばいで推移する見通しである。2024年の賃料を100とした場合、2025年は「99」、2026年は「101」、2029年は「100」と推移すると予想される。


■目次

1.はじめに
2.広島オフィス市場の現況
  2-1.空室率および賃料の動向
  2-2.需給動向
3.広島オフィス市場の見通し
  3-1.新規需要の見通し
  3-2.新規供給見通し
  3-3.賃料見通し

金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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