増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計

2025年06月12日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 未婚化や晩婚化、核家族化、高齢化の進行で配偶者と死別した高齢単身世帯の増加を背景に、単身世帯の存在感が増している。単身世帯は1990年では総世帯の23.1%だったが、2020年には38.0%となり、2050年には44.3%となる見通しだ。その内訳は、かつては若年男性が多かったが、現在は60歳以上の女性(26.1%)や35~59歳の男性(20.5%)が多く、2040年には60歳以上の男女が半数を超える(50.1%)。
     
  • 家計消費における単身世帯の存在感も増している。現在は家計消費全体3割弱だが、2040年には3割を上回るようになる。60歳以上の高年齢世帯の存在感も増しており、二人以上世帯と単身世帯を合わせた家計消費に占める割合は、現在では4割弱だが、2050年には約半数となる。なお、高年齢の単身世帯に限ると、2020年頃までは1割を下回るが、2050年には15%程度となる。
     
  • GDP統計の国内家計最終消費支出を世帯構造別に分解し将来推計を行うと、世帯当たりの消費額が少ない高年齢世帯や単身世帯が増える一方、消費額が多い40~50歳代などの家族世帯が減るため、国内家計最終消費支出は2030年頃をピークに減少し、2050年にはピーク時より約15%減少する。なお、単身世帯では2030年頃、60歳以上の高年齢世帯、高年齢の単身世帯では2045年頃まで増加傾向が続く見通しである。
     
  • 日本の消費市場の縮小に歯止めをかけるには、可処分所得は一時期より増えているものの、消費支出が減少している現状を踏まえるとともに、今後とも増加が見込まれる単身世帯の実態を丁寧に捉え、単身世帯特有のニーズに対応した商品・サービスを拡充することが有効だ。かつては、単身世帯と言えば若年層のひとり暮らしというイメージが一般的だったが、今後は高齢者が増えていくため、単身世帯共通の消費志向に加えて、性年代などの属性による違いに留意した商品・サービスを提供することが重要だ。


■目次

1――はじめに~単身世帯は30年で2.3倍に増加、現在は総世帯の約4割へ
2――世帯数および世帯構造の変化
  1|世帯数の変化
   ~人口減少下でも世帯のコンパクト化で世帯数は依然として増加傾向
  2|世帯構造の変化~単身世帯や夫婦のみ世帯など人数の少ない世帯が増加
  3|単身世帯の内訳の変化
   ~一人暮らしは若い男性から高齢男女へ、2040年に60歳以上が半数を超える
3――世帯構造の変化が家計消費へ与える影響
  1|家計消費における世帯構造の変化
   ~2050年には単身世帯が3割超、60歳以上の世帯が半数へ
  2|世帯構造変化が与える家計消費額への影響
   ~2025年頃をピークに減少、2050年には現在より1割減
4――おわりに~2040年の家計消費は単身が3割、シニアが半数、世帯構造変化応じた供給が鍵

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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