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2-3.エリア別にみたホテル・旅館の「投資適格不動産」
ホテル・旅館の「投資適格不動産(11.7兆円)」を都市別にみると、「東京23区」が約5兆4,500億円(占率47%)と最も大きく、次いで「大阪市」が約1兆6,000億円(同14%)、「京都市」が約7,800億円(同7%)、「横浜市」が約4,100億円(同3%)、「名古屋市」が約3,600億円(同3%)、「福岡市」が約3,500億円(同3%)と推計された(図表―8)。「投資適格不動産」の5割弱が「東京23区」に集積していることになる。
次に、政令指定都市のJ-REIT保有比率を確認すると、「広島市」(46%)が最も高く、次いで「札幌市」(45%)、「熊本市」(33%)、「神戸市」(31%)の順に高い(図表―9)。

続いて、政令指定都市の平均市場回転率を確認すると、「広島市」(7.4%)が最も高く、次いで「札幌市」(4.0%)、「福岡市」(3.6%)、「神戸市」(3.4%)、「京都市」(3.1%)の順に高い(図表―9)。

「東京23区」や「横浜市」、「名古屋市」は一定の資産規模を有している一方、J-REIT保有比率ならびに市場回転率が低水準に留まっており、証券化拡大の余地は大きいと考えられる。

3.「収益不動産」の市場規模と延べ宿泊者数の関係

3.「収益不動産」の市場規模と延べ宿泊者数の関係

最後に、ホテル・旅館需要を示す指標の一つである「延べ宿泊者数」と収益不動産の資産規模の関係を確認した。

「延べ宿泊者数」を都道府県別にみると、「東京都」(約9.9千万人泊)が最も多く、次いで「大阪府」(約5.1千万人泊)、「北海道」(約4.0千万人泊)、「沖縄県」(約3.3千万人泊)、「京都府」(約3.2千万人泊)の順に多い(図表-10)。

また、「外国人比率」(「延べ宿泊者数」に占める外国人の割合)は、「東京都」(43.9%)が最も高く、次いで「京都府」(37.8%)、「大阪府」(37.0%)、「福岡県」(23.8%)、「北海道」(18.0%)の順に高い。そのほか、「山梨県(17.9%)」、「大分県(17.1%)」、「岐阜県(15.6%)」も相対的に比率は高い。
図表-11(上段)は「延べ宿泊者数」と「収益不動産の資産規模」の関係を示しており、正の相関が強く、線形近似曲線に従うことがわかる。具体的には、「延べ宿泊者数」が1万人増加すると、「収益不動産の資産規模」が約4.8億円拡大する関係がみてとれる。需要が安定的に大きい地域では客室が多く整備される、もしくはADR(客室平均単価)が高いと推察される。

「延べ宿泊者数」を「外国人」と「日本人」に分けて、「収益不動産の資産規模」との関係をみると、「外国人」の方が、傾きの絶対値が大きく、相関係数も大きい結果となり、外国人延べ宿泊者数の多い都道府県では、収益不動産の資産規模が大きい傾向がみられた(図表-11(下段))。
政府は2024年4月に行われた「第23回観光立国推進閣僚会議」において、2030年までに訪日外国人旅行者数を 6,000 万人に、訪日外国人旅行消費額を15 兆円に増やす方針を示した。価値総合研究所の推計によれば、2030年の延べ宿泊者数は、約7.0億人泊(対2023年比114%)に拡大すると見込まれる。内訳をみると、外国人延べ宿泊者数は約2.1億人泊(対2023年比182%)、日本人延べ宿泊者数は約4.9億人泊(対2023年比98%)となり、外国人の大幅な増加が見込まれる(図表-12)。
収益不動産の資産規模が比較的小さい一方、外国人比率の高い都道府県(山梨県や岐阜県、福岡県、大分県等)は、収益不動産の資産規模拡大が期待される(図表-13)。
 
10 薄色は見込値・予測値を表す。なお、予測値の推計方法は、日本人・外国人別に実施した。日本人延べ宿泊者数は可処分所得の変動が影響すると想定し、将来推計はOECDによる日本の可処分所得の予測値に基づき算出した。外国人延べ宿泊者数は政府目標(2030年訪日外国人旅行者数6,000万人)を達成すると仮定し将来推計を実施した。

株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 事業部長 主任研究員 室 剛朗

株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 研究員 藤野 玲於奈

株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 研究員 宮野 慎也

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