NEW

東京オフィス市場は賃料上昇率が拡大。J-REIT市場は需給改善で反発-不動産クォータリー・レビュー2025年第1四半期

2025年05月09日

(岩佐 浩人) 不動産市場・不動産市況

4.J -REIT(不動産投信)市場

2025年第1四半期の東証REIT指数(配当除き)は、昨年12月末比+2.3%上昇した。セクター別では、オフィスが+4.3%、住宅が▲1.3%、商業・物流等が+1.6%となり、好調なオフィス市況を背景にオフィスセクターが堅調であった(図表-17)。3月末時点のバリュエーションは、純資産12.1兆円に保有物件の含み益5.8兆円を加えた17.9兆円に対して時価総額は14.6兆円でNAV倍率8は0.81倍、分配金利回りは5.1%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.6%となった。
また、J-REITによる第1四半期の物件取得額は3,799億円となり、前年同期比▲25%減少した。アセットタイプ別の取得割合は、オフィス(33%)、ホテル(32%)、物流施設(15%)、住宅(12%)、商業施設(5%)、底地ほか(4%)となり、昨年に続きホテルの取得比率が拡大する一方、物流施設の取得は低調であった(図表-18)。
第1四半期のJ-REIT市場は、10年国債利回りの大幅な上昇(1.1%→1.5%)や株式市場の下落(▲4.5%)といったマイナス材料があったにもかかわらず、上昇に転じた。その要因の1つとして、需給環境の改善が挙げられる(図表-19)。昨年の価格下落は、それまで主要な買い手であった海外投資家やJリート公募投信の売却に伴う需給悪化が大きく影響した。しかし、今年に入り、海外投資家は買い越しに転じ、Jリート公募投信からの資金流出も一巡しつつある。さらに、J-REITによる自己投資口買いが高水準で実施される一方、増資によるエクイティ調達額が大幅に減少したことも、需給の改善に寄与している。

今後については、トランプ関税による世界経済悪化のリスクや金融市場における不確実性の高まりに十分注意が必要である。一方で、J-REIT市場はトランプ関税の影響を相対的に受けにくいアセットクラスであり、資金の逃避先として選好される可能性もある。引き続き外部環境の先行き不透明感は強いものの、現在の割安なバリュエーションが見直されることに期待したい。
 
8 市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。

金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人(いわさ ひろと)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴

【職歴】
 1993年 日本生命保険相互会社入社
 2005年 ニッセイ基礎研究所
 2019年4月より現職

【加入団体等】
 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
 ・日本証券アナリスト協会検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)