中国経済:25年1~3月期の評価-春風に潜む逆風。好調な出だしとなるも、米中摩擦の正念場はこれから

2025年04月23日

(三浦 祐介) 中国経済

1.2025年1~3月のGDPの評価

中国国家統計局が2025年4月16日に発表した25年1~3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+5.4%と、前期(24年10~12月期)の同+5.4%から横ばい推移となった。季節調整後の前期比(年率)は、+4.9%と前期の+6.6%から減速した(図表1)。

前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+2.8%pt(前期+1.6%pt)、総資本形成が+0.5%pt(同+1.6%pt)、純輸出が+2.1%pt(同+2.5%pt)であった(図表2)。純輸出に関しては、輸出が減速した一方、輸入の減少幅が拡大し、引き続き経済のけん引役となった。内需に関しては、経済対策の下支えが続く一方、在庫の減少が総資本形成の寄与低下につながった可能性がある。

産業別の実質GDP成長率をみると、第1次産業は前年同期比+3.5%(前期同+3.7%)、第2次産業は同+5.9%(前期同+5.2%)、第3次産業は同+5.3%(前期同+5.8%)であった(図表3)。製造業や情報通信・ソフトウェア・ITが改善し、その他の産業の減速を補った。不動産業の成長率も減速したが、辛うじて前年増を維持している。

以上のように、現時点で米中摩擦の影響はまだ顕在化しておらず、外需と政策効果による安定という最近の構図が続いているようだ。なお、GDPデフレーターは、8四半期連続で前年同期比マイナスとなった(図表4)。今後は、第2次トランプ政権後の関税合戦を経て足元で累計145%まで高まった対中関税等によって、輸出を中心に経済への下押しが強まることが必至だ。これに対し、中国指導部は追加対策をとる可能性が高い。それにより、米中摩擦の悪影響がどの程度緩和されるかが注目点となる。

2.実体経済の動向

2.実体経済の動向

(生産・投資・外需)
生産の動向について、3月の前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、前月(25年1・2月累計、以下同)から伸びが加速した(図表5)。家具製造業や窯業で前年減が続いている一方、鉱業やハイテク製造業で伸びが高まり、生産の改善を主導した。サービス業部門では、伸びが前月から加速した。情報通信・ソフトウェア・ITや宿泊・飲食などで伸びが高まった。

PMI調査の結果をみると、製造業では、25年1月に景気の好不況の境目である50を下回ったが、2月には50を上回る水準に改善し、3月も上昇した(図表6)。サービス業では、1月から2月にかけて低下したが、3月には改善した。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、24年7月以降具体的には発表されていないが、25年3月時点で、製造業では依然として60%超であるとされた。
投資の動向について、3月の固定資産投資の前年同月比伸び率(名目、以下同)は、前月から小幅に高まった(図表7)。業種別にみると、製造業の投資は、伸びが小幅に高まった。設備投資は、24年半ばをピークに減速傾向にあったが、25年に入り再び伸びが高まっている。インフラ投資も加速し、2桁の伸びとなった。国家統計局は、設備更新支援や公共事業などの経済対策の効果であると説明している。不動産開発投資は、マイナス幅が拡大した。

外需の動向について、25年3月の輸出(ドル建て)の伸びは、前月から高まった(図表8)。国・地域別では、ASEAN、EU、米国、日本向けのいずれも改善した。財別では、機械設備や自動車・同部品が小幅に改善した一方、鉄鋼製品やコンピュータ・同部品、半導体などは伸びが低下した。輸入(ドル建て)は、伸びのマイナス幅が縮小した。貿易収支は、1~3月累計で約2,730億ドルの黒字となり、前年同期比で増加した。
(消費・家計)
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、3月は前月から加速した(図表9)。財、外食サービスともに伸びが高まった。

一定規模以上企業を対象にした統計で品目別の動向をみると、衣類等や化粧品の伸びは低調に推移している一方、宝飾品は伸びが高まった(図表10)。耐久消費財の買い替え支援策の対象となっている商品は好調であった。家電・AV機器や家具、通信機器、自動車は前月から伸びが高まったほか、(タブレットを含む)オフィス用品等の伸びも高水準で推移した。不動産市場の持ち直しに伴い改善の兆しがみられる不動産関連の財(建築・内装材)の伸びは、小幅に低下し、ゼロ近傍で推移している。
家計の状況について、都市部の調査失業率は、25年2月から3月にかけて低下した(図表11)。16~24歳(在学中の学生を除く)の失業率は、卒業シーズンを迎えた24年7月をピークに低下傾向にあったが、25年初来、再び高まる傾向にあり、若年層の雇用環境は引き続き厳しい状況にある。消費者信頼感指数をみると、雇用・所得の先行きと消費意欲は、2月にいずれも1月からやや改善したが、依然として楽観・悲観の境目である100を下回る水準で推移している(図表12)。

経済研究部   主任研究員

三浦 祐介(みうら ゆうすけ)

研究領域:経済

研究・専門分野
中国経済

経歴

【職歴】
 ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
 ・2009年:同 アジア調査部中国室
 (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
 ・2020年:同 人事部
 ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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