コラム

3月時点では米関税政策を静観~2025年3月の投信動向~

2025年04月08日

(前山 裕亮) 株式

外国株式ファンドの販売は堅調

2025年3月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、3月は外国株式ファンドに1兆2,200億円の資金流入があり、2月の1兆2,400億円とほぼ同規模の流入となった【図表1】。
 
一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別にみると、3月はインデックス型に7,500億円の資金流入と2月と同規模であった。その一方で、アクティブ型は流入額が4,100億円と2月の4,600億円から減少した。ただ、2月は新設された非上場株式を組入れるアクティブ型の外国株式ファンドに800億円超の資金流入があった。3月はそのような大規模な新規設定がなかったことを踏まえると、外国株式ファンドはタイプによらず販売が堅調だったといえよう。

売却が膨らんでいる様子はあまり見られず

2月下旬から米関税政策の動向やそれに伴う米景気減速懸念から、外国株式ファンド自体は変調をきたしている。2月下旬から3月中旬にかけて、米国株式を中心に世界的に株価が下落し、また外国為替市場では1ドル151円台から一時146円台をつけるなど円高が進行した。それに伴って多くの外国株式ファンドが同期間に下落する展開となっていた。
 
例えば、3月に資金流入が大きかった「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は9%、米国株式のみの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」にいたっては12%も2月20日から3月14日に基準価額が下落した【図表2:赤太字】。
2024年を振り返ると、2024年7月中旬から8月上旬も多くの外国株式ファンドの基準価額が急落した。外国為替市場で1ドル161円台から一時145円を下回るなど急速に円高が進行したこともあり、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」ともに7月12日から8月6日にかけての下落率は17%だった。それに伴って7月下旬、8月上旬とインデックス型の外国株式ファンドでは売却が膨らみ、純流入も急減していた【図表3】。

あくまでも今後の設定額と解約額の公表を待つ必要があるが、3月の推計の純流入額を見る限りでは、とりあえず外国株式ファンドの販売は変調をきたしていなかったようだ。3月は2024年7月中旬から8月上旬と比べると下落が小さかったため、結果的に静観する人が多かったのかもしれない。

国内株式ファンドからは一部で厳しい様子も?

バランス型ファンドも3月に1,300億円の資金流入があり、1月の1,500億円には届かなかったものの2月の1,000億円から増加しており、外国株式ファンドと同様に販売は堅調だった様子である。また、3月は金関連企業のテーマ型株式ファンド(赤太字)や金関連ファンド(青太字)も金価格の上昇を受けて好調だったが、金関連ファンドも流入額が600億円を超え、2月と同規模の資金流入があった【図表4】。
それに加えて国内株式ファンドにも1,700億円の資金流入があり、2月とほぼ同規模の資金流入があった。3月も2月と同様にインデックス型の国内株式ファンドを中心にタイミング投資と思われる買付が膨らんだ。実際に一般販売されているインデックス型の国内株式ファンドの資金動向を日次でみると、日経平均株価が2025年初の3万8,000円割れとなった翌営業日の3月3日に2025年最大の600億円の資金流入があった【図表5】。

ただし、インデックス型の国内株式ファンドには3月3日以降も国内株式の下落に伴って資金流入しているが、下落幅が大きい割に流入額が3月3日と比べて小規模にとどまっている。国内株式が想定外の大幅下落になっているためか、追加投資できない人が増えてきているのかもしれない。
いずれにしても、4月に入ってから内外問わず世界的に株価が一段と下落してきている。3月は販売が堅調だった外国株式ファンドやバランス型ファンド、やや苦戦している様子もうかがえた国内株式ファンドの今後の販売動向に注目したい。

金融研究部   主任研究員

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴

【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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