鉱工業生産25年2月-1-3月期は4四半期ぶりの減産となる可能性が高まる

2025年03月31日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.2月の生産は4ヵ月ぶりの上昇

経済産業省が3月31日に公表した鉱工業指数によると、25年2月の鉱工業生産指数は前月比2.5%(1月:同▲1.1%)と4ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.1%、当社予想は同3.3%)を若干上回る結果となった。出荷指数は前月比3.0%と4ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲1.7%と2ヵ月ぶりの低下となった。
2月の生産は高めの伸びとなったが、24年11月から25年1月までの落ち込み(▲3.0%)を取り戻すには至らなかった。

2月の生産を業種別に見ると、輸送機械(除く自動車)が前月比▲6.2%、無機・有機化学が同▲4.0%と大きく落ち込んだが、半導体製造装置等の生産用機械が前月の落ち込み(前月比▲10.2%)の反動もあり、前月比8.2%の高い伸びとなったほか、低迷が続いていた電子部品・デバイスが同10.1%(1月:同▲4.8%)の急上昇となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は24年10-12月期の前期比3.4%の後、25年1月が前月比▲7.9%、2月が同9.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は24年10-12月期の前期比0.4%の後、25年1月が前月比2.8%、2月が同▲1.3%となった。
GDP統計の設備投資は24年7-9月期の前期比▲0.1%の後、10-12月期は同0.6%と2四半期ぶりに増加した。GDP統計の設備投資は一進一退となっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。

消費財出荷指数は24年10-12月期の前期比0.6%の後、25年1月が前月比5.5%、2月が同1.5%となった。2月は耐久消費財が前月比2.0%(1月:同2.2%)、非耐久消費財が前月比▲0.9%(1月:同3.4%)となった。

GDP統計の民間消費は、24年4-6月期が前期比0.8%、7-9月期が同0.7%と高めの伸びが続いた後、10-12月期は同0.0%と横ばいにとどまった。物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果一巡が消費の伸びを抑えた。25年1、2月の消費財出荷指数は比較的堅調だが、その他の消費関連指標はそれほど強くない。消費者物価(総合)は米や生鮮食品の高騰もあり25年1月が前年比4.0%、2月が同3.7%と高い伸びが続いており、消費の抑制につながっている。消費の持ち直しは当分緩やかにとどまる可能性が高い。

2.自動車生産は関税引き上げの影響で大幅減産へ

製造工業生産予測指数は、25年3月が前月比0.6%、4月が同0.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲1.9%、1.0%であった。

予測指数を業種別にみると、2月に大幅増産となった生産用機械は3月が前月比3.8%、4月が同8.8%と好調を維持する見込みとなっているが、自動車を含む輸送機械は3月が前月比▲5.2%、4月が同▲4.1%の減産計画となっている。この生産計画は米国の関税引き上げをある程度考慮したものとみられるが、トランプ大統領が3/26に発表した輸入自動車に対する25%の追加関税の影響が完全には織り込まれていないと考えられる。3月以降の自動車生産はさらに下振れる公算が大きい。

輸出に占める米国向けの割合は19.8%、米国向け輸出に占める自動車・自動車部品の割合は34.1%(いずれも2024年の数値)となっている。自動車は他産業への波及も大きいことから、自動車の減産は生産全体の低迷につながるリスクを高めるだろう。
25年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、25年1-3月期の生産は前期比0.0%となるが、実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があることを踏まえると、1-3月期は4四半期ぶりの減産となる可能性が高まった。現時点の生産計画は横ばい圏だが、米国の関税引き上げの影響を考慮すると、実際の生産は大きく下振れることが見込まれ、4-6月期も減産となる可能性があるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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