3-1│転職者数の職業別ランキング
ここからは、厚生労働省の「雇用動向調査」より、直近のミドルの転職状況についてみていきたい。なお、同調査は、雇われている人に関する調査であり、転職によって自営業者や役員になった人は含まれない。
始めに、ミドルの転職を職業別に分析する。同調査より、常用労働者
3のうちパートタイムを除く「一般労働者」について、転職者数の職業を、男女別に順位付けしたものが、図表5である。なお、ここで指す職業は、転職後に就いた職業である。
まず「45~49歳男性」では、全体の転職者15万4700人のうち、「専門的・技術的職業従事者」が最大の約4万3100人である。図表3で見たように、45~49歳男性では75万人が従事する最大の職業であり、母数が大きい影響が考えられる。ただし、就業者数で言えば、「生産工程従事者」と「事務従事者」も同規模だったが、転職者数は比較的少ない。
本人に、専門的な技術や高度な職務経験があるかどうかで、転職者数に差がついていると考えられる。「管理的職業従事者」は、図表3でみたように、就業者数は約11万人と比較的少ないが、転職者数は2万3700人で、職業別の順位は3位となっている。やはり、専門的な知識や技術、高度な職務経験がある職業が、転職しやすいと言えるだろう。
「45~49歳女性」について、まず全体の転職者数に着目すると14万3,200人。男性に比べて、就業者数は60万人以上少なかったが、一般労働者の転職者数は約11万人差しかなく、
女性の方が、雇用が流動的だと言える。
出産退職後に再就職するケースが多いことや、より家庭と仕事を両立しやすい職場を求める人が多いことなどが、影響している可能性がある。
職業別の順位を見ると、「事務従事者」がトップ、次いで「専門的・技術的職業従事者」となっている。事務従事者は就業者の母数が多いことが関連していると見られる。前稿で紹介したように、
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、「事務的な仕事」の転職者を採用した事業所が「採用した理由」では、「離職者の補充のため」(58.5%)に次いで、「経験を活かし即戦力になるから」(42.0%)が多いことから、同じ事務職の中でも、経営管理や人事、財務、法務など、いわゆる「コーポレート職種」と呼ばれるような分野で、専門スキルや実績がある女性が、転職を果たしている可能性がある。
職業別順位3位の「サービス職業従事者」には、「介護サービス職業従事者」や、「飲食物調理従事者」、「接客・給仕職業従事者」などが含まれる。
次に、「50~54歳男性」を見ると、転職者数は約15万600人。1で説明したように、「45~49歳男性」よりも、就業者数が多いこともあり、転職者数もやや多い。職業別に見ると、就業者数が3位の「専門的・技術的職業従事者」が首位だった。次に多いのが「管理的職業従事者」であり、ここでもやはり、高度な職務経験がある管理職は、転職市場のニーズが大きいと言えるだろう。
「50~54歳女性」を見ると、転職者は約10万6900人。図表3でみたように、「45~49歳女性」よりも就業者数は多いが、転職者数は少ないことが分かった。
女性では、高度なスキルや職務経験がある人を除いては、50代前半になると、一般的には転職が難しくなると言えそうだ。
職種別に順位を見ると、首位は母数が最大の「事務従事者」、2位は「専門的・技術的職業従事者」、3位は「サービス職業従事者」で、順位自体は45~49歳と同じである。1、2位を見ると、やはり、専門スキルのある人が多く転職していると考えられる。なお、順位は6位だが、「管理的職業従事者」の転職者は約4900人。図表3でみたように、労働力調査によると、50~54歳女性の「管理的職業従事者」は約2万人に過ぎない。雇用動向調査と労働力調査では、「管理的職業従事者」の対象範囲や調査時期などに違いがあり、正確な意味では労働力調査の就業者数が「母数」だとは言えないが、
50代前半の女性管理職は、転職が活発だと言って間違いないだろう。