日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目

2025年03月19日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 3月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感の小幅な悪化が示されそうだ。この場合、一昨年末以降、景況感が一進一退の域を脱していない形になる。自動車生産の回復等が支えになったものの、トランプ関税の悪影響や中国経済の低迷が景況感を圧迫したと考えられる。一方、大企業非製造業では、好調なインバウンド需要などに後押しされて、景況感がやや改善すると予想している。
     
  2. 先行きの景況感は総じて悪化が示されると予想。製造業では、トランプ関税やそれに端を発する貿易戦争への警戒感が景況感に現れるだろう。非製造業では、物価高継続による消費の腰折れや各種コストの増大懸念が反映される形になると見ている。
     
  3. 2024年度の設備投資計画(全規模)は、前年比8.0%増と予想。例年の3月調査同様、下方修正とはなるが、省力化・脱炭素・DX推進等に伴う投資需要を背景とする堅調な投資計画が維持されると見込んでいる。一方、今回から新たに公表される2025年度計画はやや慎重な結果となりそうだ。トランプ政権の動向は極めて不確実性が高く、事業環境の先行き不透明感が高まっているためだ。
     
  4. 今回の短観で最も注目されるテーマは「トランプ関税の影響」だ。米国の景況感指標では既に関税発動を受けて悪化したものが見受けられるほか、市場ではリスク回避的な動きが頻発している。関税発動後初の調査となる今回の短観で、国内企業の景況感や設備投資計画等に負の影響がどれだけ現れるかかが注目される。もう一つの注目テーマは「国内の物価上昇」だ。企業の物価見通しや販売価格判断DIで示されるインフレ予想とその裏付けとなる値上げ意向は、今後の物価上昇と密接に関係する。日銀の利上げを占ううえで、インフレ予想の高止まりと値上げの継続意向等が引き続き確認できるかがポイントになる。

 
■目次

3月短観予測:製造業景況感は弱含み、インフレ予想は高止まりか
  ・非製造業の景況感は堅調
  ・来年度設備投資計画はやや弱めか
  ・注目テーマ:インフレ予想とトランプ関税の悪影響
  ・早期利上げの決定打とはなりづらい

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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