関税と日銀利上げの思惑で揺れる円相場、次の展開は?~マーケット・カルテ3月号

2025年02月18日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

今月月初に1ドル155円台でスタートしたドル円は、上旬に一時150円台に下落し、足元も152円前後と円高が進んでいる。この間、円高ドル安材料が相次いだためだ。

具体的には、(1)米国の景況感や小売売上などが悪化したほか、(2)トランプ政権が相次いで打ち出した追加関税の大半(カナダ・メキシコ関税、鉄鋼・アルミ関税、相互関税)で即時発動が見送られ、利下げ停止を促す米インフレ再燃懸念がやや和らいだ。さらに、(3)賃金やGDPなどの強めの指標が続いたことなどを受けて日銀の早期利上げや利上げの到達点引き上げ観測が強まり、円高が促進された。

発動が先送りされているトランプ政権による追加関税については、今後相手国の譲歩によって撤回されるものも出てくると見込まれるが、一部は発動されるだろう。新たな関税が発動される可能性もある。従って、今後は一部関税の発動に伴う米インフレ懸念によってドル高圧力が強まる展開が想定される。ただし、トランプ関税は米国を含む世界経済の減速懸念を通じてリスクオフの円買いをたびたび誘発すると見込まれるため、一方的なドル高材料にはならないと見ている。

日銀の利上げを巡っては、足元でOIS市場が織り込む6月会合までの利上げ確率が約6割に達するなど、利上げ観測がやや前のめり的に高まっている印象を受ける。日銀は既往の利上げの影響やトランプ政権の動向を慎重に見極めると見られるほか、円安がやや是正されていることから、さほど利上げを急がないだろう。日銀の利上げ観測も一服が見込まれる。従って、3か月後の水準は現状比でやや円安ドル高の153円台と予想している。

月初1.2%台半ばでスタートした長期金利は、日銀の利上げ観測の高まりを受けて上昇し、足元では1.4%に肉薄している。

既述の通り、日銀の利上げ観測はやや前のめり感があり、今後は一服が見込まれる。金利上昇の動きが収まれば、金利上昇を警戒して債券購入を手控えている投資家の購入意欲が回復し、金利の抑制を促すだろう。3ヵ月後の水準は現状比でやや低下の1.2%台と予想している。
 
(執筆時点:2025/2/18)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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