良好な景況感が継続。先行きも楽観的な見方が強まる。~期待はホテルと産業関係施設(データセンターなど)が上位。リスク要因として、国内金利と米国政治・外交への警戒高まる~第21回不動産市況アンケート結果

2025年02月04日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

3.投資エリア選好
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資エリア」について質問したところ、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)」(73%)との回答が最も多く、次いで「福岡市」(13%)、「大阪市」(9%)、「東京都区部(都心5区を除く)」(9%)との回答が多かった(図表-6)。

ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所の調査によれば、日本の「収益不動産(約315.1兆円)」の約4割が東京都に集積している4。市場規模の観点から投資エリアとして、東京都心部の優位性は高く、「都心5区」との回答は前回調査の59%から73%に増加した。

また、地方都市では唯一、「大阪市」の回答が前回調査から増加した。大阪市では、梅田駅や淀屋橋駅を中心に複数の大規模開発計画が進行し都市機能の更新が進んでいることから、期待が高まっているものと考えられる。
 
4 吉田資・室 剛朗・藤野 玲於奈・宮野 慎也『わが国の不動産投資市場規模(2024年)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2024年12月27日)
4.不動産投資市場のリスク要因
(1) 概況
「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「国内金利」(71%)との回答が最も多く、次いで、「建築コスト」(62%)、「米国・政治」(44%)との回答が多かった (図表-7)。

「国内金利」に関して、日本銀行は今年1月の金融政策決定会合で政策金利を0.50%に引き上げた。引き続き段階的な利上げが想定されるなか、これまで低下基調にあった不動産キャップレートが反転に向かう可能性もあり、金利上昇への警戒が高まっている。

「建築コスト」に関して、資材価格や労務費などの上昇が継続するなか、新規開発計画の見直しや竣工時期の延期が増加しており、建築コストの上昇リスクが強く意識されているようだ。
(2) 前回調査との比較 [懸念が高まった(後退した)リスク要因]
前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「米国政治・外交」(22%→44%)と「国内金利」(59%→71%)であった。一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は、「中国経済」(21%→6%)と「欧米経済」(27%→16%)であった(図表-8)。

「米国政治・外交」に関して、2025年1月20日に始動したトランプ政権の政策が世界の経済・金融政策の不確実性を高める最大の要因5との見方もあり、不動産投資市場のリスク要因と考える回答が増えていると推察される。

「中国経済」に関して、中国経済は依然不安定な状況にあるものの、2024年の実質GDP成長率が前年比+5.0%と成長率目標を達成しており6、リスク要因として懸念が後退したものと推察される。
 
5 伊藤 さゆり『トランプ2.0とEU-促されるのはEUの分裂か結束か?-』(ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート、2025年1月17日)
6 三浦 祐介『中国経済:24年10~12月期の評価-前期から加速するも、外需・政策依存。不動産不況には底打ちの兆し』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2025年1月29日)
5.不動産価格のピーク時期
「東京の不動産価格のピーク時期」について、「2025年」(31%)との回答が最も多く、次いで、「2024年あるいは現時点(既に価格はピーク)」(27%)、「2026年」(21%)との回答が多かった(図表-9)。

前回調査では、「2023年あるいは現時点(既に価格はピーク)」(35%)との回答が最も多く、次いで「2024年」(30%)が多かった。

日経不動産マーケット情報によると、2024年の不動産取引額は前年比+36%増加の4兆8,439億円となり、金融危機後では最大となった。不動産投資市場が堅調に推移するなか、不動産価格のピーク時期に対する見解は前回調査と比べてやや後ろ倒ししたものと考えられる。
 
 

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金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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