ユーロ圏GDP(2024年10-12月期)-前期比0.0%と横ばいの推移

2025年01月31日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.0%で横ばい推移

1月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2024年4-6月期、季節調整値)】
前期比は0.0%、市場予想1(0.1%)を下回り、前期(0.4%)から低下した(図表1)
前年同期比は0.9%、市場予想(1.0%)を下回り、前期(0.9%)から横ばいだった(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:ドイツ・フランスの2大国が前期比マイナス成長

ユーロ圏の24年10-12月期の成長率は前期比0.0%(年率換算0.1%)となり、7-9月期(前期比0.4%、年率1.6%)から大幅に減速した。実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月期)対比では4.7%、エネルギー価格が高騰した22年の夏(22年7-9月期)対比では0.9%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ▲0.2%(7-9月期0.1%)、フランス▲0.1%(7-9月期0.4%)、イタリア0.0%(7-9月期▲0.0%)、スペイン0.8%(7-9月期0.8%)となった(図表3横軸)。前期比伸び率について、ドイツ統計局は政府消費や家計消費が増加したものの輸出が大幅に減少したと指摘、イタリア統計局は供給面では農林水産とサービス業が減少する一方、鉱業が増加、需要面では内需の寄与はマイナスだったが純輸出の寄与がプラスだったと指摘している(フランス・スペインは後述)。なお、前年同期比ではスペインやポルトガルの回復が進む一方で、ドイツ、オーストリア、エストニアがマイナスとなった(図表3縦軸)。特にドイツは前年同期比で見ると6四半期連続のマイナスと低迷が目立つ。エネルギー危機対比ではアイルランド、エストニア、オーストリア、ドイツがマイナス圏にある(図表4、ただしアイルランドはコロナ禍以降の回復力で見ると突出して大きい)。
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で確認する。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.4%(前期0.6%)、政府消費0.4%(前期0.5%)、投資▲0.1%(前期▲0.3%)、輸出▲0.2%(前期▲0.8%)、輸入0.4%(前期▲0.4%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は▲0.1%ポイント、純輸出の前期比寄与度は▲0.2%ポイントであり、主に個人消費、政府消費は成長したが、投資・在庫・外需が伸びを抑制した。産業別の付加価値は、工業が▲0.4%(前期0.7%)、建設業が▲0.9%(前期▲0.3%)、市場型サービス産業▲0.1%(前期0.6%)、非市場型サービス▲0.3%(前期0.6%)といずれも低迷した。より細かい内訳でも、芸術・娯楽・家計向けサービス(前期比▲3.0%)、金融・保険(▲1.3%)、輸送(▲0.6%)、情報(▲0.6%)、製造業(▲0.6%)など不振業種が目立った。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費1.0%(前期1.2%)、政府消費0.4%(前期2.5%)、投資3.4%(前期▲1.4%)、輸出0.1%(前期0.4%)、輸入1.3%(前期0.9%)となり、主要内需(個人消費、投資)の伸びが成長をけん引した(図表6)。産業別には、工業が0.3%(前期0.1%)、建設業が2.6%(前期▲1.6%)、サービス業が0.9%(前期1.0%)となり、ここのところサービス業の高成長が続いている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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