1|東京都子育て支援住宅認定制度の概要
「東京こどもすくすく住宅認定制度」
1は、2016年に東京都が導入した「東京都子育て支援住宅認定制度」を継承し、2023年に開始された子育て世帯に適した住環境を提供するための認定制度である。この認定制度では、居住者の安全性や家事のしやすさなどに配慮された住宅で、子育てを支援する施設やサービスの提供など、子育てしやすい環境づくりのための取組みを行っている優良な住宅を東京都が認定する制度であり、子どもの成長に寄与する安全で快適な住まいを普及させ、家族が安心して暮らせる住宅を推進することを目的としている。認定の対象は、都内に新築された共同住宅や既存共同住宅のリフォーム物件で、認定基準に基づいて評価が行われる。認定を受けた物件の事業者には、東京都から住宅及び子育て交流促進施設の新築または整備に係る費用の一部が補助金として交付される仕組みとなっている。
この制度の認定基準では、住宅の性能や設計が子育て世帯にどのように安心・快適な環境を提供できるかを多角的に評価している。具体的には、保育園や学校・公園・医療施設などの生活インフラが近くに揃う「立地」条件、階段や角のない設計・窓やベランダの高さや柵の設置など事故防止のための「住戸内」の設計・性能、転落防止や防犯・防災など安全対策が講じられた「共有部分」の設備、子どもが自由に遊べる「子育て支援施設やキッズルーム」の設置、さらに近隣住民とのコミュニティ形成が可能な環境・親同士の交流や子どもたちの友達作りをサポートするためのコミュニティ活動の「管理・運営」などの項目が認定基準として設けられている。
そして、これら認定基準の適合度合い(認定基準の必要適合項目数)
2に応じて、子どもの安全確保に特化した「セーフティモデル」、事業者の特色を生かした設備等の選択が可能な「セレクトモデル」、設備等の充実に加え、コミュニティ形成などソフト面も重視した「アドバンストモデル」の3モデルに分類されている。「アドバンストモデル」の基準では、住宅の面積が50m
2以上、「セレクトモデル」と「セーフティモデル」については、45m
2以上の面積
3が必要とされている。
認定モデルごとに補助限度額が異なる仕組みになっており、新築賃貸住宅の場合、「セーフティモデル」は基本的な必須項目のみの基準を満たすもので補助限度額は50万円、「セレクトモデル」は必須項目に加えて選択項目を満たすもので補助限度額は100万円、そして「アドバンストモデル」は更に多くの必須・選択項目の基準を求められ、補助限度額も200万円
4となっている。事業者にとっては、より高い基準を満たした住宅を建築することにより、より多くの補助金を受けることが可能となっており、認定制度を活用するインセンティブともなっている。これにより、住宅市場全体の質向上にも寄与することが期待されている。
2024年9月末時点で、認定を受けた住宅の総数は新築集合住宅92件、既存集合住宅9件、改修集合住宅1件であり、全住戸数は5,044戸である
5。この内訳を詳しく見ると、新築分譲住宅は2,572戸、新築賃貸住宅は1,745戸、既存賃貸住宅は642戸、既存賃貸住宅の改修は85戸が含まれている。認定住宅をモデル別にみると、「アドバンストモデル」は3,653戸で全体の約72.4%を占めており、続いて、「セレクトモデル」が898戸で17.8%、「セーフティモデル」が493戸で9.8%となっており、事業者は最上位の基準を中心に取り組んでいることが分かる。