QE速報:7-9月期の実質GDPは前期比0.2%(年率0.9%)-消費主導で2四半期連続のプラス成長

2024年11月15日

(斎藤 太郎) 日本経済

● 7-9月期は前期比年率0.9%と2四半期連続のプラス成長

本日(11/15)発表された2024年7-9月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.2%(前期比年率0.9%)と2四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測10月31日:前期比0.2%、年率0.8%)。

住宅投資(前期比▲0.1%)、設備投資(前期比▲0.2%)は小幅な減少となったが、所得税・住民税減税による可処分所得の増加を背景に民間消費が前期比0.9%の高い伸びとなったことから、国内民間需要が前期比0.7%と2四半期連続で増加した。

輸出が前期比0.4%の低い伸びにとどまり、輸入の伸び(同2.1%)を下回ったことから、外需は前期比・寄与度▲0.4%(年率▲1.6%)と成長率を押し下げたが、民間消費を中心に国内需要が高い伸びとなったことから、2四半期連続のプラス成長を確保した。
 
名目GDPは前期比0.5%(前期比年率2.1%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前期比0.3%(4-6月期:同1.2%)、前年比2.5%(4-6月期:同3.1%)となった。輸出入デフレーターはいずれも前期比でマイナスとなったが、国内需要デフレーターが前期比0.2%(4-6月期:同1.0%)と15四半期連続で上昇した。
2024年7-9月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。2024年4-6月期の実質GDP成長率は、民間消費の下方修正などから前期比年率2.9%から同2.2%へ下方修正された。
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.9%と2四半期連続で増加し、4-6月期の同0.7%から伸びを高めた。物価高による下押し圧力が残るなかで、南海トラフ地震臨時情報や台風の接近・上陸を受けた一部列車の運休、旅行のキャンセル、工場の操業停止等が夏場の消費を下押ししたが、6月から実施されている所得税・住民税減税で家計の可処分所得が大幅に増加したことが、消費の押し上げ要因となった。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、供給制約の緩和に伴う自動車販売の増加などから耐久財が前期比3.7%の高い伸びとなったほか、食料品などの非耐久財(同0.9%)、交通、外食、旅行、宿泊などのサービス(同0.2%)も増加したが、食料品などの非耐久財(同0.8%)も増加したが、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲2.8%)は減少した。

雇用者報酬は、名目・前年比3.6%(4-6月期:同3.8%)の増加となった。4-6月期に続きボーナスの高い伸びが雇用者報酬を押し上げた。実質雇用者報酬は前年比0.9%(4-6月期:同0.8%)と2四半期連続で増加した。
 
住宅投資は前期比▲0.1%と2四半期ぶりに減少した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2024年1-3月期の78.6万戸から、4-6月期には81.9万戸へと持ち直したが、7-9月期は78.3万戸へと減少した。住宅価格上昇の影響などから住宅投資は弱い動きが続いている。
 
設備投資は前期比▲0.2%と2四半期ぶりに減少した。日銀短観2024年9月調査では、2024年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が6月調査から▲0.5%下方修正され、前年度比10.1%となった。設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応やテレワーク関連投資、デジタル化に向けたソフトウェア投資を中心に、基調としては持ち直しの動きが続いているが、7-9月期は台風による工場の稼働停止などによって押し下げられた。
 
公的固定資本形成は、4-6月期の高い伸び(前期比4.1%)の反動から前期比▲0.9%と2四半期ぶりに減少した。
 
外需寄与度は前期比▲0.4%(前期比年率▲1.6%)と3四半期連続のマイナスとなった。財貨・サービスの輸出が前期比0.4%の低い伸びにとどまり、財貨・サービスの輸入の伸び(同2.1%)を下回ったことから、外需は成長率の押し下げ要因となった。グローバルなIT関連需要の回復を背景に財輸出は前期比1.9%の増加となったが、サービス輸出が▲4.2%の減少となった。サービス輸出を押し上げてきたインバウンド需要(非居住者家計の国内での直接購入)がこれまでの高い伸びの反動や台風などの影響で▲13.3%の減少となった。
 
202410-12月期は3四半期連続のプラス成長を予想するが、下振れリスクは高い)
2024年7-9月期は、外需が成長率を大きく押し下げたものの、所得税・住民税減税による家計の可処分所得の大幅増加を背景に消費主導のプラス成長となった。

現時点では、10-12月期の実質GDPは民間消費、設備投資などの国内需要を中心に前期比年率1%台のプラス成長を予想している。ただし、円安やエネルギー関連の物価高対策縮小の影響で物価が上振れる可能性が高まっており、民間消費を中心に下振れリスクは高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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