消費者物価(全国24年9月)-コアCPI上昇率は10月に2%程度まで鈍化した後、再び加速へ

2024年10月18日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPI上昇率は前月から0.4ポイント縮小の2.4%

総務省が10月18日に公表した消費者物価指数によると、24年9月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.4%(8月:同2.8%)となり、上昇率は前月から0.4ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:2.3%、当社予想も2.3%)を上回る結果であった。

食料(生鮮食品を除く)の上昇率が2ヵ月連続で拡大したが、「酷暑乗り切り緊急支援」により、電気代、都市ガス代の上昇率が大きく低下したことが、コアCPIを押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.1%(8月:同2.0%)、総合は前年比2.5%(8月:同3.0%)であった。

コアCPIの内訳をみると、「酷暑乗り切り緊急支援」で電気代、都市ガス代の補助金が再開され、電気代(8月:前年比26.2%→9月:同15.2%)、ガス代(8月:前年比11.1%→9月:同7.7%)の上昇率が大きく低下したことに加え、ガソリン(8月:前年比▲3.8%→9月:同▲4.8%)、灯油(8月:前年比▲0.7%→9月:同▲4.6%)の下落率が拡大したことから、エネルギー価格の上昇率は8月の前年比12.0%から同6.0%へ大きく鈍化した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比3.1%(8月:同2.9%)と上昇率が前月から0.2ポイント拡大した。食料(生鮮食品を除く)は23年8月の前年比9.2%をピークに鈍化傾向が続いていたが、24年7月の前年比2.6%を底に2ヵ月連続で上昇率が高まった。米類の上昇ペースがさらに加速(8月:前年比28.3%→9月:同44.7%)したことに加え、既往の円安に伴う輸入物価の上昇が消費者物価に波及している。

内訳をみると、米類のほかに、ケチャップ(同12.0%)、果実ジュース(同32.9%)などが前年比で二桁の高い伸びを続ける一方、前年の上昇率が高かった裏が出ることで、麺類(同▲1.3%)、卵(同▲11.4%)、食用油(同▲8.5%)、ビール(同▲4.9%)など、下落する品目も増えており、食料の価格にはばらつきが見られる。

外食は前年比2.7%(8月:同2.5%)と3ヵ月連続で上昇率が拡大した。
サービスは前年比1.3%(8月:同1.4%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。外食の伸びは高まったが、宿泊料(8月:前年比9.5%→9月:同6.8%)、タクシー代(8月:前年比4.2%→9月:同3.8%)などの伸びが鈍化した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.46%(8月:0.94%)、食料(除く生鮮食品・外食)が0.63%(8月:0.60%)、その他財が0.63%(8月:0.57%)、サービスが0.68%(8月:0.68%)であった。

2.物価上昇品目数が5ヵ月ぶりに増加

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、9月の上昇品目数は394品目(8月は387品目)、下落品目数は91品目(8月は100品目)となり、上昇品目数が5ヵ月ぶりに前月から増加した。上昇品目数の割合は75.5%(8月は74.1%)、下落品目数の割合は17.4%(8月は19.2%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は58.0%(8月は55.0%)であった。

3.コアCPI上昇率は10月に2%程度に鈍化した後、再び加速へ

9月は「酷暑乗り切り緊急支援」によって、電気・都市ガス代が大きく押し下げられたが、10月には前年比ベースの押し下げ幅がさらに拡大する。10月のコアCPI上昇率は2%程度まで鈍化するが、11月には「酷暑乗り切り緊急支援」の値引き単価が縮小され、12月には支援策が終了することから、電気・都市ガス代の上昇率は大きく高まる。

コアCPIは11月に2%台前半、12月に2%台半ばまで伸びを高めた後、24年度内は2%台半ばから後半で推移することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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