始めに、損害保険における、保険料の決まり方について復習しておく。
一般に保険料は、
・「純保険料(率)」 ・・・事故発生の際、保険会社が支払う保険金に充てられる部分
・「付加保険料(率)」・・・会社の事業に必要な経費
で構成されている。このうち純保険料部分に関して、損害保険料率算出機構が「参考純率」を算出する。これは、損害保険料率算出機構が、会員会社から報告を受けた契約や保険金支払いに関するデータを保有し、分析することにより算出される。
本来は、個々の会社が、それぞれ別に、実績データと統計に基づいて保険料を算出してもいいはずだが、ほぼ全ての損害保険会社のデータを集めて検討した方が、データの信頼性あるいは安定性がより高まるため、こうした仕組みが利用されることになる。分析には合理的な保険数理的手法が用いられ、自然災害に関しては将来シミュレーションも行われている。
作成された参考純率は、金融庁に届出が行われ、適合性審査(「合理的であること」「妥当であること」「不当に差別的でないこと」)を受けることで、正式に決定される。(ここまでが今般のできごと)
さてそのあと、会員損害保険会社は、この参考純率をそのまま使用することもできるし、自社の保険商品に合わせて修正して使用することもできる。さらに各社で算出した付加保険料を加えたものが、契約者に対する保険料率となる。なおこうした仕組みは、自動車保険、傷害保険、火災保険の種目別に検討される。(なお、地震保険や自賠責保険の保険料率も損害保険料率算出機構において算出されているが、これらは(参考純率とは呼ばず)「基準料率」と呼ばれている。届出等の手続きはほぼ同様である。)
逆に参考純率の使用義務はなく、各社が独自に料率を算出してもよいが、その場合は商品審査の段階でその独自料率の妥当性について相当程度労力をかけて説明する必要がある(と推察される)。これに対し、参考純率を使用している場合は、その部分は、先に述べた適合性については問題がない前提で、金融庁の商品審査が進められる(ので、説明の手間が省ける)。
またこうした参考純率は、検証が毎年行われ、必要と判断された場合は改定される。
自動車保険の参考純率の改定などは、最近では以下のようなものである。
2017年(平均▲ 8.0%引下げ)
2018年(クラス細分化)
2021年(平均▲ 3.9%引下げ)
2023年(クラス細分化)
2024年(平均+ 5.7%引上げ)・・・今回
これらを受け、実際にはそのあとに各社ごとに保険料の改定が行われている。
3――今回の自動車保険の参考純率の改定内容