2024年4-6月期の実質GDP~前期比0.8%(年率3.0%)を予測~

2024年07月31日

(斎藤 太郎) 日本経済

● 4-6月期は年率3.0%のプラス成長を予測

2024年4-6月期の実質GDPは、前期比0.8%(前期比年率3.0%)と2四半期ぶりのプラス成長になったと推計される1

物価高による下押し圧力が強い状態は続いているが、不正問題発覚による生産・出荷停止の解除を受けて自動車販売が回復したことなどから、民間消費が前期比0.7%と5四半期ぶりに増加、高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比0.5%と2四半期ぶりに増加した。政府消費は前期比0.0%の横ばいだったが、公的固定資本形成が前期比2.6%の増加となったことから、国内需要が5四半期ぶりに増加したとみられる。

財輸出は低迷したが、サービス輸出の高い伸びを主因として財貨・サービスの輸出が前期比2.1%となり、財貨・サービスの輸入(同0.9%)を上回ったことから、外需も前期比・寄与度0.2%(年率1.0%)と成長率を押し上げた。

2024年4-6月期は1-3月期とは逆に、認証不正問題の影響緩和による自動車の挽回生産が民間消費、設備投資、輸出と幅広い需要項目の押し上げに寄与したとみられる。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.5%(うち民需0.4%、公需0.1%)、外需が0.2%と予測する。
 
名目GDPは前期比1.1%(前期比年率4.5%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.4%(1-3月期:同0.5%)、前年比2.2%(1-3月期:同3.4%)と予測する。輸入デフレーターが前期比1.8%の上昇となり、輸出デフレーターの伸び(同2.8%)を上回ったことが、GDPデフレーターを押し下げたが、国内需要デフレーターが前期0.6%(1-3月期:同0.6%)と14四半期連続で上昇した。
 
8/15に内閣府から2024年4-6月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2024年1-3月期の実質GDP成長率は外需、設備投資の下方修正などから、前期比年率▲2.9%から同▲3.4%へ下方修正されると予想している。
 
2024年4-6月期のプラス成長は、1-3月期の大幅な落ち込みの反動の側面が強く、景気が一進一退の状態から抜け出したとは言えない。日本経済の回復を確認するためには、7-9月期以降の動向を見極める必要がある。現時点では、7-9月期の実質GDPは6月に開始された所得税・住民税減税による可処分所得の増加が民間消費を押し上げることを主因として、前期比年率2%台後半のプラス成長を予想している。
 
1 7/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。

●主な需要項目の動向

● 主な需要項目の動向

・民間消費~自動車販売の回復、サービス消費の堅調から、5四半期ぶりの増加~ 
民間消費は前期比0.7%と5四半期ぶりの増加を予測する。
物価高による下押し圧力が強い状態は続いているが、不正問題発覚による生産・出荷停止の影響で急速に落ち込んだ自動車販売が、出荷停止の解除に伴う挽回生産によって増加に転じたことに加え、外食、旅行などのサービス消費が堅調に推移した。

2024年4-6月期の消費関連指標を確認すると、自動車販売台数が前期比14.7%(1-3月期:同▲17.5%)の高い伸びとなったほか、外食産業売上高が前期比1.2%(1-3月期:同1.9%)、延べ宿泊者数が前期比4.9%(1-3月期:同4.1%)、小売業販売額指数が前期比0.4%(10-12月期:同0.0%)と増加した(いずれもニッセイ基礎研究所による季節調整値、外食産業売上高、小売販売額指数は消費者物価指数で実質化)。
・住宅投資~4四半期ぶりの増加~
住宅投資は前期比2.0%と4四半期ぶりの増加を予測する。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2023年1-3月期の86.4万戸から2024年1-3月期には78.6万戸まで減少したが、4-6月期は81.9万戸へと持ち直した。利用関係別には、持家は前期比でマイナスとなったが、貸家、分譲、給与住宅が前期比でプラスとなった。
・民間設備投資~2四半期ぶりの増加~
民間設備投資は前期比0.5%と2四半期ぶりの増加を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2024年1-3月期の前期比▲3.3%の後、4-6月期は同1.2%となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2024年1-3月期に前期比4.4%と4四半期ぶりの増加となった後、4、5月の平均は1-3月期を▲0.3%下回っている。

日銀短観2024年6月調査では、2023年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が3月調査から▲0.7%下方修正され、前年度比9.4%(実績)となった後、2024年度計画は3月調査から5.1%上方修正され、前年度比10.6%となった。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応やテレワーク関連投資、デジタル化に向けたソフトウェア投資を中心に、持ち直しの動きが続いている。
・公的固定資本形成~4四半期ぶりの増加~
公的固定資本形成は2023年度補正予算の効果などから前期比2.6%と4四半期ぶりの増加を予測する。

公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2024年4-6月期に前年比8.8%と6四半期連続で増加し、1-3月期の同5.2%から伸びが高まった。一方、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2024年1-3月期に前年比▲5.5%と2四半期連続で減少したが、4、5月の平均は同2.5%と増加に転じている。
・外需~成長率を押し上げ~
外需寄与度は前期比0.2%(前期比年率1.0%)と2四半期ぶりのプラスを予測する。輸出が前期比2.1%の増加となり、輸入の伸び(同0.9%)を上回ったことから、外需は成長率の押し上げ要因となった。財輸出は低迷したが、インバウンド需要の拡大などからサービス輸出が高い伸びとなったことが財貨・サービスの輸出を押し上げた。
2024年4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲1.5%(1-3月期:同▲1.7%)、EU向けが前期比▲9.5%(1-3月期:同▲3.2%)、アジア向けが前期比0.0%(1-3月期:同▲1.5%)、うち中国向けが前期比▲1.4%(1-3月期:同▲2.4%)、全体では前期比0.1%(1-3月期:同▲3.5%)となった。アジア向けはほぼ横ばいだが、それ以外の国・地域向けは弱く、特にEU向けは自動車を中心に急速に落ち込んでいる。

 
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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