グローバル株式市場動向(2024年6月)-半導体関連銘柄の上昇が続く

2024年07月11日

(原田 哲志) 株式

1――半導体関連銘柄の上昇が続く

2024年6月、グローバル株式市場は上昇した。好調な半導体関連銘柄により米国、台湾などが上昇する一方で、議会選挙で極右勢力が台頭したフランスをはじめ欧州は政治的不透明感により下落した。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)のリターンは2024年6月 +2.3%(米ドル建グロス配当込み)1、過去1年(2023年7月-2024年6月)では+19.9%となっている(図表1)。

先進国、新興国ともに上昇したが、新興国が先進国よりも大きく上昇した。先進国(MSCI  World Index)が+2.1%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+4.0%となった(図表2)。
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が+4.8%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が▲0.4%とグロース優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+2.9%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が▲1.0%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が▲1.1%と大型株が上昇する一方で、中小型株は下落した(図表4)。
 
1 以下、特に断りのない限りリターンは米ドル建グロス配当込みを示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

国別に見ても多くの国が上昇した(図表5)。台湾(+12.2%)、南アフリカ(+9.4%)、韓国(+8.3%)がリターンが高かった。一方で、アルゼンチン(▲10.6%)、メキシコ(▲10.5%)、アイルランド(▲7.7%) がリターンが低かった。主要国について見ると、米国(+3.6%)、中国(▲1.9%)、ドイツ(▲1.7%) 、日本(▲0.7%)となった。

米国は、軟調な景気指標が重石となったものの半導体関連企業への期待による株高から上昇した。ドイツはフランス議会選挙での極右勢力の伸長による欧州での政治的不透明感の高まりから下落した。

日本は、円安による企業収益増加期待から円建てでは小幅上昇したが、ドル建てでは下落となった。中国は不動産市場の下落が継続していることなどから下落した。

台湾では、半導体開発・設計の聯発科技(メディアテック)、電子機器製造の鴻海精密工業(ホンハイ)、半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)といったエヌビディアの取引先企業が上昇したことが株式市場を押し上げた2

アルゼンチンでは、ハビエル・ミレイ大統領が大幅な内閣改造を行ったことによる政治的混乱が嫌気され株式市場は下落した。
業種別に見ると、 半導体・半導体製造装置(+10.0%)、ソフトウェア・サービスおよび機器(+9.0%)、テクノロジー・ハードウェアおよび機器(+7.9%)がリターンが高かった。一方で、 耐久消費財・アパレル(▲4.7%)、公益事業(▲4.2%)、素材(▲3.5%) がリターンが低かった(図表6)。

エヌビディアや関連企業の上昇により半導体・半導体製造装置セクターの上昇が続いている。
 
2 日本経済新聞、「台湾株上昇、アジアで突出 NVIDIA関連の勢い止まらず」、2024年6月19日

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価は幅広く上昇した (図表7)。時価総額上位30位の企業では、ブロードコム(+14.0%)、オラクル(+13.4%)、イーライリリー(+12.1%)のリターンが高かった。一方で、トヨタ自動車(▲6.9%)、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(▲5.7%)、サウジ・アラビアン・オイル(▲4.5%) のリターンが低かった。ブロードコムは2─4月決算で市場予想を上回る利益と売上高を公表したことが好感された。また、同社はエヌビディアに続き1株を10株に分割することを公表した。トヨタ自動車は量産に必要な「型式指定」の認証不正が発覚したことから株価は下落した。

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は上昇が続いた。6月11日、世界銀行は「世界経済見通し」を公表した3。この中で、「世界経済の成長率は2024年に2.6%で前年から横ばいとなり、2025~26年には平均2.7%に上昇すると予測される」としている。2024年の見通しは5月に公表された国連、OECDの予測でも上方修正されている。しかし、成長率の予測値は新型コロナ前の10年間の平均3.1%を下回っている。これは多くの国で新型コロナ前よりも経済の成長が緩やかになることを示唆している。

パンデミックや紛争、インフレ、金融引き締めによる混乱から脱却し世界経済は安定に向かうとみられる。しかし、世界銀行は同時に途上国の債務返済、貿易機会の制限、気候変動への対応コストといったリスクを指摘している。安定化が期待されるがリスク要因も存在する中で、グローバル株式市場の動向に引き続き注視していきたい。
 
3 世界銀行、「世界の成長率、3年ぶりに安定へ」、2024年6月11日
 
 

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金融研究部   准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任

原田 哲志(はらだ さとし)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
資産運用、ESG

経歴

【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
     大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

【加入団体等】
 ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
 ・修士(工学)

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