(日銀)現状維持(開催なし)
5月はもともと金融政策決定会合が予定されていない月であったため会合は開催されず、金融政策は現状維持となった。次回会合は、今月13~14日にかけて開催される予定となっている。
なお、5月9日に「金融政策決定会合における主な意見(4月MPM分)」が公表され、物価に関して、多くの参加者が上振れリスクへの警戒感を強めている様子がうかがわれた。金融政策運営に関しては、先行きの利上げを志向する意見が大勢となっていたうえ、「(展望レポートの見通しが実現するのであれば、)金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」、「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある」などと利上げ・金利上昇が加速する事態への言及も目立った。
長期国債買入れについても、「どこかで削減の方向性を示すのが良い」、「市場動向や国債需給をみながら、機を捉えて進めていくことが大切である」などと、減額に前向きな意見が目立った。
また、5月27日には、内田副総裁が日銀主催の国際コンファランスにおいて基調講演を行った。同副総裁は1990年代末以降のデフレと金融政策運営を振り返ったうえで、デフレからの脱却について、デフレ原因の解消とデフレ的なノルム(社会的な規範・慣行)の克服を必要条件として挙げ、前者(デフレ原因の解消)については労働市場の不可逆な変化(賃金上昇要因となる労働投入余力の縮小)を理由として、「自信を持ってイエスと答えられる」と発言。後者(ノルムの克服)については、「答えはそこまで明白ではない」としながらも、鍵としてやはり労働市場の構造変化を挙げ、「社会的なノルムは解消に向かっている」と述べた。そして、最後には、「インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っている」としつつも、「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入った」、「今回こそはこれまでと違う(This time is different)」と強い言葉を用いて、先行きへの期待・自信を表明した。
続いて、5月29日には、安達審議委員が熊本県金融経済懇談会において挨拶を行った。
安達氏は円安に関して、「短期的な為替変動への対応を金融政策で行うと物価の安定に影響が出てしまう」と述べた上で、「過度な円安の状況が長期化して物価の動きに影響が生じることで、物価安定の目標の実現に影響を与えると予想される場合には、金融政策による対応も選択肢の一つになる」との見解を示した。
金融政策運営については、「足もとにおいて持続的・安定的な物価上昇が実現する見通しの確度がかなり高まっているが、まだ確信を持って実現できるといえる状況ではないため、達成できると確信する時が来るまでは、緩和的な金融環境を維持することが重要」であり、「拙速な利上げは絶対に避けなければならない」との認識を示した。
一方で、「(物価の)下振れリスクと同時に上振れリスクにも配慮する必要がある」とし、「基調的な物価上昇率が2%に向けて高まるという状況が持続している限りにおいて、(中略)金融緩和度合いを段階的に調整することが大切」と述べたほか、国債買入れについても「段階的に減額していくことが望ましい」と発言するなど、金融政策の正常化を支持する姿勢を示した。