雇用関連統計24年3月-有効求人倍率は1年4ヵ月ぶりに改善したが、求人数は減少が続く

2024年04月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.失業率は前月から横ばいの2.6%

総務省が4月30日に公表した労働力調査によると、24年3月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想は2.6%)となった。

労働力人口が前月から25万人の減少となる中、就業者が前月から23万人減少し、失業者は前月から横ばいの182万人(いずれも季節調整値)となった。3月は労働力人口、就業者ともに減少したが、2月はそれぞれ31万人、22万人の増加となっており、均してみればほぼ横ばいの動きとなっている。
就業者数は前年差27万人増(2月:同61万人増)と20ヵ月連続で増加したが、前月から増加幅が縮小した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差14万人増(2月:同12万人増)と21ヵ月連続、医療・福祉が前年差44万人増(2月:同15万人増)と2ヵ月連続で増加したが、製造業が前年差57万人減(2月:同25万人増)、と6ヵ月ぶり、卸売・小売業が前年差1万人減(2月:同6万人増)と2ヵ月ぶりに減少した。
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ41万人増(2月:同81万人増)と25ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差11万人増(2月:49万人増)と5ヵ連続、非正規の職員・従業員数が前年差30万人増(2月:同32万人増)と7ヵ月連続で増加した。
 

2.有効求人倍率は1年4ヵ月ぶりに改善したが、求人数の減少は止まらず

厚生労働省が4月30日に公表した一般職業紹介状況によると、24年3月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の1.28倍(QUICK集計・事前予想:1.26倍、当社予想は1.27倍)となった。有効求人数は前月比▲0.9%の減少となったが、有効求職者数が同▲1.9%と求人数を上回る減少幅となったことが求人倍率の上昇につながった。有効求人倍率は22年11月以来、1年4ヵ月ぶりに改善したが、有効求人数の減少には歯止めがかかっておらず、良い形での改善とは言えない。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.12イント上昇の2.38倍となった。新規求人数が前月比▲0.7%の減少、新規求職申込件数が同▲6.0%の減少となった。

新規求人数は前年比▲7.4%(2月:同▲3.6%)と7ヵ月連続で減少した。産業別には、ほとんどの業種が前年比で減少したが、製造業(前年比▲10.8%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲10.5%)、教育・学習支援業(同▲10.5%)は前年比二桁の大幅減少となった。
雇用情勢は改善傾向が続いているが、23年に入ってからは新規求人数の減少が続いており、企業の求人意欲に陰りが出てきたことを示している。特に、宿泊・飲食サービス業は就業者の大幅増加が続く一方、新規求人数が減少に転じており、両者の動きが大きく乖離している。

充足率(新規求人数に対する就職件数の割合)が10%台前半の過去最低水準で推移するなど、ハローワークの求人が採用につながりにくくなっていることを背景に、採用方法がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしている可能性が考えられる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)