首都圏中古マンション市場の動向(2024年2月)~マイナス金利解除は中古マンション価格に影響する?

2024年03月22日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

2024年2月の首都圏中古マンションの成約価格は上昇し、成約件数は微増となった。新築マンションより割安だからといって、中古マンションの売れ行きが必ずしも良いわけではないようだ。日銀がマイナス金利解除を決め、17年ぶりの利上げに踏み切る姿勢を見せたが、このようなマクロ要因の影響は需要の弱まっているところから顕在化する可能性が高い。中古マンション市場に需要停滞の兆候は見られるのだろうか。
 
成約価格と新規登録価格や在庫価格の乖離は拡大し、売り出し価格の水準が高い「築年が浅い」・「より都心に近く立地が良い」といった性質のマンションの売買が成立し、相対的に競争力がなく売り出し価格が安いマンションが売れ残る傾向が強くなっていると思われる。
また最近の動向として、住宅は全般的に売れにくくなっており、新築マンション市場で見られる実需層の需要減退 がその他の住宅市場でより強く生じている懸念がある。
 
成約件数を分子、成約2カ月前の新規登録件数を分母とした、首都圏中古マンションの成約率は四半期前の2023年11月 の「前年比では低下、2019年比ではややプラス」との傾向から変わらない。しかし、四半期別に公表されている価格帯別 の成約件数を前期の新規登録件数で除して求めた成約率は下記4グループに分けられると考える。

(1) 価格が3,000万円未満:成約率が20%を切り、何らかの理由で競争力が劣る
(2) 価格が3,000万以上5,000 万円未満:売れ行きが良いが直近1年は成約率が低下
(3) 価格が5,000万以上1億円未満:(2)に同じだが(4)に近い面も
(4) 価格が1億円以上:資産価値維持やインフレ・ヘッジが最も期待できる

現在は、条件の良い物件が売れて入手しづらい一方で、割高と感じられる物件は増えているなど、実需層にとっては新築マンションも中古マンションも買いづらい市場ではないだろうか。単純に理論通りに考えるなら、金利上昇した場合には不動産の収益価格や融資の減額を通じて不動産価格は下がる可能性があり、仮に影響が生じるとしたら需要停滞している価格帯である。中古マンションについては、新築マンションのような供給量調整は働かないため、実需層帯のマンションの価格に下落圧力が生じやすいということは頭の隅に置いておくとよいだろう。しかし、これまでの日銀の行動は市場への配慮がみられる。住宅市場に対しても大きな影響がでないように行動すると思われ、影響は限定的ではないだろうか。

■目次

・首都圏中古マンションの価格上昇、成約件数横ばいの傾向が続く
・「条件の良い物件」だけが売れる傾向は加速、在庫は増加傾向
・成約率は首都圏中古マンション全体では前期と同様の傾向
・価格帯別では成約率に変化が
・日銀政策変更の影響は限定的も、実需価格帯の水準は変化の可能性が残る

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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