経済研究部 准主任研究員
斉藤 誠(さいとう まこと)
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
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地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比4.8%(前月:同4.9%)と若干低下した一方、農村部は同5.3%で前月から横ばいとなった。
2月のCPIの内訳をみると、燃料・電力とコアCPIが低下した。
まず食品は前年同月比7.8%(前月:同7.6%)と小幅に上昇して高止まりした(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同30.2%)は前月(同27.1%)に続いて大幅に増加した。野菜価格は7-8月に急上昇して9-10月に一旦低下したが、11月以降は再び高騰している。2月はじゃがいもとタマネギの価格がそれぞれ前月比▲4.7%、同▲16.6%と下落した一方、トマトとニンニクの価格がそれぞれ同2.6%、同19.1%と上昇した。野菜のほか、豆類(前年同月比18.9%)や香辛料(同13.5%)、穀物製品(同7.6%)の価格が高止まりした。一方、食用油(同▲14.0%)の価格下落が続いたほか、牛乳・乳製品(同3.9%)と加工食品(同3.7%)が落ち着いた値動きとなった。足元のCPI上昇率は低下傾向にあり、インド準備銀行(RBI)の物価目標の4%を上回ったものの、許容範囲の+2%~6%内に6カ月連続で収まっている(図表3)。ラビ作物の出荷によりインフレが軟化傾向にあるが、食品インフレには依然として不確実性が存在している。またインド政府は財政再建を進めるため、4月には食料や燃料、肥料などの補助金を削減する予定であり、当面のCPIの押上げ要因となりそうだ。従って、インフレ率は当面の間、物価目標の中央値を上回って推移すると予想する。堅調な成長が続いていることを踏まえると、RBIは利下げを急ぐ必要がなく、主要政策金利であるレポ金利は少なくとも今年半ばまでは6.5%で据え置かれるだろう。
インド政府は2月24日に家計支出消費調査(HCES)の結果を発表した。2022年8月~2023年7月に実施された調査であり、この結果では所得の向上に伴って家計支出に占める穀物の割合が低下した一方、加工食品や衣料品、医療サービス、耐久消費財への支出が増えていることが示された。政府は2023年8月~2024年7月にかけて、もう1度実施する調査結果を用いてCPIを改定する予定であり、改定後はCPIバスケットの40%近くを占める食品の比重が低下する可能性がある。価格が不安定な食品の比重が下がれば、インド政府が食品の輸出制限措置を実施する頻度は少なくなりそうだ。
経済研究部 准主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職