貿易統計24年1月-貿易収支(季節調整値)が2年8ヵ月ぶりの黒字に

2024年02月21日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.貿易収支(季節調整値)が2年8ヵ月ぶりの黒字に

財務省が2月21日に公表した貿易統計によると、24年1月の貿易収支は▲17,583億円の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲18,881億円、当社予想は▲20,900億円)を上回る結果となった。輸出が前年比11.9%(12月:同9.7%)と前年比で二桁の伸びとなる一方、輸入が前年比▲9.6%(12月:同▲6.9%)と減少幅が拡大したため、貿易収支は前年に比べ17,481億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比2.3%(12月:同2.9%)、輸出価格が前年比9.4%(12月:同6.6%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲8.4%(12月:同▲3.1%)、輸入価格が前年比▲1.3%(12月:同▲4.0%)であった。
原数値の貿易収支は大幅な赤字となったが、1月は正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすいという季節性がある。貿易収支の実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。季節調整済の貿易収支は2,353億円の黒字(23年12月は▲4,401億円の赤字)となり、21年5月以来、2年8ヵ月ぶり黒字となった。輸出が前月比▲3.6%の減少となったが、輸入の減少幅(同▲10.5%)がそれを大きく上回った。

24年1月の黒字化は輸入の大幅減少が主因で、このまま黒字が定着する可能性は低いが、基調としては22年夏場をピークに貿易赤字の縮小傾向が続いていると判断される。
24年1月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=85.9ドル(当研究所による試算値)と、12月の90.5ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は80ドル程度で推移しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年2月以降も80ドル台半ばで推移することが見込まれる。

2.アジア向け、中国向け輸出は春節の影響で上振れ

24年1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比7.1%(12月:同16.8%)、EU向けが前年比▲0.2%(12月:同2.2%)、アジア向けが前年比4.3%(12月:同▲2.9%)、うち中国向けが前年比20.4%(12月:同2.7%)となった。

24年1月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲7.9%(12月:同11.5%)、EU向けが前月比▲3.1%(12月:同7.9%)、アジア向けが前月比2.6%(12月:同1.3%)、うち中国向けが前月比4.7%(12月:同6.2%)、全体では前月比▲4.7%(12月:同7.8%)となった。
1月は米国向け、EU向けが前月の高い伸びの反動で落ち込む一方、アジア向け、中国向けが上昇したが、これは中華圏の春節の時期が昨年とずれている(23年は1月下旬、24年は2月中旬)ことによってかさ上げされており(当研究所の季節調整値は春節の影響が除去しきれていない)、2月はその反動で落ち込む可能性が高い。アジア向け輸出の基調を判断するためには、1、2月を均して見る必要がある。

EU向け、中国向け輸出の低迷が続く一方、米国向け輸出は堅調を維持してきたが、先行きは累積的な金融引き締めの影響で景気減速が見込まれるため、回復ペースが鈍化する可能性が高い。輸出は当面弱い動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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