ぶり返す円安、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ2月号

2024年01月23日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

年初1ドル142円台でスタートしたドル円は再び円安が進み、足元では148円前後に達している。(1)年初に発生した能登半島地震を受けた日銀による早期金融政策正常化観測の後退、(2)堅調な経済指標やFRB要人発言を受けた米国の早期利下げ観測の後退、(3)年初からの株価上昇に伴うリスク選好的な円売り、(4)年初からのNISA拡充に伴う対外証券投資フロー、が複合的に円安に作用したと考えられる。

米利下げ観測は後退しつつあるものの、依然として過度の早期利下げを織り込んでいると考えられることから、一旦その修正が入ることで当面はドルが堅調に推移し、さらなるドル高も想定される。一方、3月に入ると、日銀の正常化が秒読み段階に入ることで(筆者は4月25-26日MPMと予想)円高圧力が高まると見ている。4月以降はFRBの利下げ接近が意識されやすくなることもドル安に働くだろう。3カ月後の水準は143円前後と見込んでいる。

なお、NISA拡充に伴う円売りフローは現状データが限られるものの、無視できないレベルと推測される。特につみたて投資枠分は機械的に円売りフローを発生させるため、長期的な円高抑制要因になり得る。

年初1ユーロ155円台でスタートしたユーロ円も、ドル円同様上昇し、足元では161円台にある。日銀の早期正常化観測が後退したうえ、リスク選好的な円売りユーロ買いやECB要人による利下げ観測へのけん制発言などが作用した。当面はユーロの高止まりが想定されるものの、ドル円同様、春には日銀の正常化が秒読み段階に入ることで円高圧力が高まると見ている。春以降はECBの利下げ観測が徐々に強まることもユーロ安に働くだろう。3カ月後の水準は157円前後と見込んでいる。

年初に0.6%台前半でスタートした長期金利は、日銀による早期正常化観測の後退を受けて一時0.5%台に低下した後、米利下げ観測の後退を受けて上昇に転じるなど方向感を欠き、足元では0.6%台半ばにある。当面は米利下げ観測の後退に伴って底堅く推移するだろう。さらに、3月以降には日銀の正常化観測が加わることで、金利は徐々に上昇に向かうと見ている。3ヵ月後の水準は0.8%台と予想している。
 
(執筆時点:2024/1/23)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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