首都圏中古マンション市場の動向(2023年11月)~お手頃価格の中古マンションを見つけるのは困難に

2023年12月21日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

2023年11月の中古マンションの成約価格は上昇傾向が続いているが、成約件数は2022年半ば以降は横ばい傾向である。一方、成約率は低下して2019年ごろの水準に戻っており、在庫となる中古マンションが増加している。
 
新築マンションは価格が高騰し供給も制限されていることから、もともとは新築マンションを買おうと考えていた人がお手ごろ価格に惹かれて中古マンションを購入するとすれば、成約件数はもっと増えてもよいはずである。しかし、中古マンションを買いたい人は新しく売り出された中古マンションのうち築年が浅いマンションを購入し、築年が古いマンションは在庫として売れ残っている。そもそも新築マンションの販売が8割を占めていた国内住宅市場においては、築年が古いマンションの供給が増えてもそれを買いたい人は増えにくいのだろう。
 
価格帯別では、3,000万以下のマンションは成約件数も在庫件数も減少傾向で、この価格帯の売り出し物件を見つけるのは今後困難となるだろう。また7,000万円超のマンションは、マンションを購入したい人の希望に合致するようにリフォームが施されていると考えられ、従来は新築マンションにくらべて売れ行きの悪かった中古マンションの流動化に貢献していると考える。なお、在庫が増加している4,000万円超7,000万円以下では、中間層のマンション購入予算を販売価格が上回ってきている可能性や、今が最も高値で売り時だと考えているマンション所有者が増加している可能性がある。
 
競争力が相対的に劣るマンションが築25年を超える場合、売却には時間を要する可能性が高くなるだろう。一方、今後も新築マンションの供給は減り続け、お手頃価格の中古マンションについても供給が不足すると予想される。中古マンションを買いたい人は、探し始める前に妥協できる部分と妥協したくない部分を事前によく検討しておき、実際に中古マンションを購入するかどうかの判断をする場面では、設備不良や近隣の環境等を十分に確認しつつも、出来るだけ早く決断できるよう準備しておく必要がある。但し、決断が付かない場合は、あまり慌てて決断せず、市況の好転を気長に待つという選択肢もあると思う。

■目次

・首都圏中古マンションの価格は上昇が続き、成約件数は横ばいに
・在庫は増加傾向、成約率は低下傾向
・売り出されるマンションの築年が古くなっている
・お手頃価格のマンションが市場から消えている
・中古マンションを購入したい人は求める条件をよく整理して決断の準備を

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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