ブラジルGDP(2023年7-9月期)-3四半期連続の前期比プラス成長

2023年12月06日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.1%でプラス成長が継続

12月5日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2023年7-9月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は2.0%、市場予想1(1.8%)を上回ったが、前期(3.5%)から低下した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は0.1%、予想(▲0.3%)を上回ったが、前期(1.0%)から減速した。

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:消費や輸出が高成長を維持

23年7-9月期の実質GDP伸び率は前期比0.1%(季節調整値、年率換算0.6%)で、4-6月期(前期比1.0%、年率換算4.0%)から減速したものの、予想を上回る高い伸び率を記録した。コロナ禍前(19年10-12月期)比では7.2%となった(図表4・5)。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が1.1%(前期:0.9%)、政府消費が0.5%(前期:1.0%)、投資▲2.5%(前期:▲0.3%)、輸出が3.0%(前期:3.5%)、輸入が▲2.1%(前期:4.1%)となった。消費や輸出は前期に続き高めの成長を維持する一方、投資はマイナス成長が続いている。ブラジル中銀は8月から利下げを開始し、11月までに1.5%ポイント引き下げているが(13.75→12.25%)、7-9月期時点では投資の下支えには至っていない。

なお、コロナ禍前との対比では、個人消費が5.8%、政府消費が4.7%、投資が8.9%、輸出が19.4%、輸入3.1%だった(図表4)。
産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は前期比▲3.3%(前期:0.5%)、第二次産業は同0.6%(前期:0.9%)、第三次産業は同0.6%(前期:1.0%)だった。第一次産業はマイナス成長となったが、IBGEは特に前期までの大豆生産が好調だったことによる反動減と評価している。

より細かい業種では、第二次産業のうち電気・ガスが前期比3.6%と高成長だったが、建設業が▲3.8%と大きく落ち込んだ。なお、IBGEは暑い気候が電力・水消費を促したと指摘している。また第三次産業では、金融(前期比1.3%)、不動産(前期比1.3%)、情報・通信(前期比1.0%)は高めの伸び率だったが、運輸(前期比▲0.9%)はマイナス成長、卸・小売(前期比0.3%)は冴えなかった。
23年7-9月期の名目成長率は前年同期比5.4%(前期:7.3%)となった。名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は3.4%(前期:3.8%)と低下が続いている。

交易条件に関しては、輸出デフレータと輸入デフレータのいずれも下落するなかで、緩やかな改善が続いている(図表6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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