終わりが見えない円安の行方~マーケット・カルテ10月号

2023年09月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初に1ドル145円台でスタートしたドル円は、引き続き緩やかな円安基調となった。相次ぐ堅調な米経済指標と原油価格の上昇を受けて米金融引き締めの長期化観測が強まり、米長期金利が上昇したことが主因だ。円買い介入への警戒感や俄かに台頭した日銀のマイナス金利解除観測が円の下値を支えているが、昨日のFOMCを受けて米金融引き締め観測が一段と高まったことで、足元では148円台前半に達している。

FRBのインフレに対する警戒感は根強く、原油価格も高止まりが想定されるため、しばらくは米追加利上げや引き締め長期化観測を背景とするドル高圧力が続きそうだ。1ドル150円への到達も視野に入ってきている。円安のペースが比較的緩やかであるため、(過度の変動を抑えるという建前である)円買い介入の発動までにはまだ距離が残っていると思われるが、介入への警戒感が今後も円の下値を支えるだろう。150円を突破すれば、介入の可能性がかなり高まると見ている。日銀による早期のマイナス金利解除やYCC解除は見込んでいないが、仮に解除されたとしても、日銀は金利抑制スタンスを続けるとみられるため、影響は限られるだろう。

ただ、11月半ば~12月になると、米インフレ鈍化と景気減速感の台頭を通じて米利上げ打ち止め観測が浸透し、ドル高圧力が一服すると見ている。3か月後の水準は145円前後と予想している。

1ユーロ157円台半ばでスタートした今月のユーロ円は足元でも157円台後半にある。ECBは中旬に追加利上げを実施したが、打ち止め観測が台頭してユーロの上値を抑えたうえ、日銀によるマイナス金利解除観測等も円の支えとなった。ECBによる追加利上げ観測はしばらく残るものの、次第に打ち止め感が広がり、ユーロが弱含むと予想。3ヵ月後の水準は155円台と見込んでいる。

月初0.6%台前半でスタートした長期金利は、足元で0.7%台半ばに上昇している。米金利の上昇が波及したほか、植田日銀総裁がインタビュー記事で金利上昇を許容する姿勢を示したためだ。今後も日銀の金融政策正常化観測が燻りたびたび金利上昇圧力になるものの、金利上昇による投資妙味の高まりを受けた国債需要が金利上昇の抑制に働く。また、11月半ば~12月には米利上げの打ち止め観測も抑制要因になるだろう。3ヵ月後の水準は現状比で横ばいと予想している。
 
(執筆時点:2023/9/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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