日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは1ポイント上昇の6と予想、価格転嫁の勢いや資金繰りに注目

2023年09月19日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 9月短観では、自動車領域での供給制約緩和や円安進行に伴う輸出採算の改善を受けて、大企業製造業の景況感が引き続き改善すると見ている。ただし、中国経済の回復の遅れや半導体市場の低迷が抑制要因となり、改善幅はごく小幅に留まると見ている。非製造業については、経済活動正常化に伴うサービス需要やインバウンド需要の回復を受けて、景況感の改善基調が維持されていると見ているが、物価上昇による消費の下押しや人手不足感が景況感の重石になり、小幅な改善に留まると見込んでいる。
     
  2. 先行きの景況感は総じて悪化が示されると予想。製造業では自動車の挽回生産への期待が支えになるものの、利上げに伴う欧米経済の悪化や中国経済の回復の遅れ、足元の原油高・円安進行による原材料価格の再上昇などへの警戒感がやや優勢となる可能性が高い。非製造業では、物価上昇に伴う国内消費の腰折れや人手不足の深刻化、原材料価格の再上昇などへの警戒感が台頭し、先行きに対する慎重な見方が示されると見ている。
     
  3. 23年度の設備投資計画(全規模)は前年比12.9%増へとやや上方修正されると予想。例年9月調査では上方修正される傾向が強い。ただし、実態としても、収益回復を受けた投資余力の改善、経済活動の正常化継続、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を追い風として、堅調な計画が維持されていると言えるだろう。
     
  4. 今回の短観において、景況感や設備投資計画以外で特に注目されるのは企業による値上げの勢いを示す「販売価格判断DI」と、予想物価上昇率を示す「企業の物価見通し」だ。物価上昇の今後の持続性を考えるうえで重要な手がかりになるだろう。また、最近ではゼロゼロ融資の返済開始や物価高などを受けて倒産が増えてきていることから、中小企業の資金繰り状況を示す「資金繰り判断DI」に大きな変動がないかも注目される。

 
■目次

9月短観予測:景況感の動きは限定的に、設備投資計画は堅調を維持
  ・大企業製造業の景況感は辛うじて2期連続改善か
  ・設備投資計画は堅調を維持
  ・注目ポイント:販売価格判断DIと企業の物価見通しなど
  ・政策修正を正当化する材料になるか

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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